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Execute.41:Perfume of the Death./その身に纏うは死の芳香②

 戒斗とアイン、二人が隠れていた柱の陰から飛び出して仕掛けたのは、互いに殆ど同じタイミングだった。

 NZ-75とモデル586、睨み合う二つの銃口から放たれた弾頭が掠め合い、交錯する。手数の上ではダブルカーラム弾倉のオートマチックを使う戒斗の方が圧倒的に有利だが、しかし一発当たりの威力ではアインの586も馬鹿にならない。.357マグナムの威力はよく知っているからこそ、一発たりとも貰いたくはない。

(今だ……!)

 アインの586の弾が切れたタイミングを見計らい、NZ-75を左手へ戒斗は一気に距離を詰めていく。ダンダンダン、と残弾を撃ち尽くす勢いでNZ-75を撃ちまくりながら、アインへと一気に肉薄を図る。

「…………」

 防戦一方で反撃に移れないアインと戒斗の距離が詰まり、遂に奴の刀の射程圏内へと収まろうとした時だった。

「ッ……!」

 丁度弾を切らし、スライドをホールド・オープンさせたNZ-75を――――戒斗は、あろうことかアインへ向けて投げ飛ばしたのだ。

「…………!?」

 余りに突拍子も無く、そして意味不明な行動にアインの動きが一瞬だけ止まる。すぐさまアインはモデル586を持った左腕で迫り来るNZ-75を振り払うが、

「掛かったな……!」

 しかし、それこそが戒斗の本当の狙いだった。

 アインが飛んで来たNZ-75に意識を奪われた一瞬、戒斗は身を低くし地を蹴り、一気に距離を詰めていた。

「!」

 戒斗に懐へ潜り込まれたことに気付いたアインがリアクションを返そうとしたが、既に何もかもが遅すぎる。

「ふっ……!」

 回し蹴りのようにハイキックの形で振り上げられた左足、そのフォーマルシューズに包まれた爪先は正確にアインの左手首の裏側を捉えていて。そこを蹴られたアインは思わず手の力が抜け、そのまま蹴られた勢いで手の中の586を遙か彼方へと滑らせてしまう。

(まずは、飛び道具を削ぐ)

 すぐさま脚を下ろし、そのままの勢いで大きく一歩を踏み込んだ戒斗は右拳の低い正拳をアインの腹へと見舞う。「ぐっ」と苦悶の表情で喘ぐアインは何とか堪えたようだったが、しかしキツい一撃なのには間違いなかった。

 しかし戒斗は攻めの手を緩めない。右の正拳を放つとすぐに左手を腰の方へと這わせ、グリップを握り締めればガーバー・マークⅡのダガー・ナイフを逆手の抜きざまで斬り上げる一撃を放つ。

 これを、アインは自分の日本刀で防ぐことで回避。そのまま破れかぶれに戒斗の腹を蹴って後ろに飛ぶ。

「ぐっ……!」

 腹を蹴られたことで苦悶の声を漏らしながら、後ろにたたらを踏む戒斗は湧き上がってくる吐き気を気合いだけで押さえ付ける。

「っ…………」

 それは間合いを取ったアインの方も同様で、その顔はまだ苦悶の色が抜けきらないでいた。

 互いに一足一刀より少し遠い間合いだ。それをキープしつつジリジリと円を描くように摺り足で睨み合いながら、戒斗は左手のマークⅡをくるりと器用に回転させ順手に持ち直す。この状況ならば逆手よりも上手く戦えると判断したのだ。

「…………」

 そうしていると、アインは何故か右手の刀を左腰の鞘へと戻した。カチンと刀が鞘に収まる小気味の良い音が聞こえれば、アインは脚を一定間隔に開き身を低く構えた。

 明らかに居合いの構えだ、と戒斗は判断した。しかも反撃に特化したディフェンス寄りの物ではない。寧ろ斬撃を研ぎ澄まし初撃の速度を最大限まで高める為の、どちらかといえばオフェンシヴな居合いの構えだ。

(この構え、何処かで……)

 そんなアインの構えを見て、戒斗は記憶の奥底に妙なデジャヴを感じていた。アインの取ったこの構え、確かに何処かで見覚えがある。いつか何処かで、強烈な印象とともに目の当たりにしたような記憶が、しかし糸を辿りきれないままでぼんやりとしたようにしか思い出せない。

「フゥ……ッ」

 アインは乱れていた呼吸を整え、そして上目でキッと戒斗を見据えた。そして、

「禊葉一刀流――――」

 構えを取り、その気迫を最大限まで高めていく。丹田で練りに練った気を、携えた刃に集中させるようにして。

「――――壱之型、(つらね)

 神速で抜き放たれた居合いの一撃が、構える戒斗へと迫る。


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