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Execute.29:Perfume of the Death./ハード・ボイルド②

 その後、二人はシャワーで寝汗を流し。朝食をルームサービスで簡単に済ませば、この日はホテルの部屋に籠もりっきりだった。

「…………」

 傍らでエマが眺めるテレビの音が流れる中、戒斗は独り椅子に座り、目の前のテーブルに広げられた大量の銃火器を分解清掃する作業に黙々と取り掛かっている。

 CZ-75コピーのNZ-75自動拳銃や、数挺のトカレフTT-33コピー・213式拳銃を細かく分解し、各パーツの擦り合わせなどを確認。必要とあらば研磨し擦り合わせてから新しいガンオイルを塗布し組み上げる。勿論、各々の予備弾倉に9mmパラベラムのジャケッテッド・ホロー・ポイント弾を詰めていくのも忘れない。弾だけは拘って、ルーシィに無理を言いアメリカの一流メーカー、フェデラル社の工場装弾(ファクトリー・ロード)品を手に入れて貰っていた。

 その拳銃類が終わると、今度は長物に取り掛かる。中国製AK-47である五六式自動ライフルと、レミントンM870のコピー品であるHP9-1ショットガンの分解清掃も行っていく。どれも新品でなく少しばかり使用感のある中古品だが、これぐらいの方が良い具合にナラシ(・・・)が終わっていて丁度良い。こういう精密な機械は、新品だから良いというモノではないのだ。

「はい、カイトっ」

 と、その二挺を組み上げ、次に銃身と銃床を切り落としソウドオフ仕様になったコルト・M79グレネード・ランチャーへ取り掛かろうとした時だった。傍らからスッとエマの手が伸びてきて、テーブルの上に黒く濁った液体の注がれたコーヒーカップが置かれたのは。

 振り返ると、エマの微かな笑顔があった。どうやら部屋に備え付けられていたもので珈琲を淹れてくれたらしい。戒斗は「悪いな、気を遣わせて」と軽く礼を言ってから、作業用のメカニクス・グローブを脱いでそのコーヒーカップを手に取った。

「あんまり、根詰めすぎないようにね?」

「分かってるよ、でもやっとかなきゃならないんだ」

「そうだけどさ……」

「いざ鉄火場に殴り込むとなりゃ、頼れるのは自分自身と、そしてコイツらだけだ。手前の獲物ぐらい万全の状態で臨まにゃ、戦えるものも戦えなくなっちまう」

「……うん」

 説明口調っぽく言う戒斗の傍らに立つエマは、何故か少しだけ寂しそうな浮かない顔色で。そんな彼女の意図を何となく察した戒斗は「もうすぐだよ」と微かな笑顔を向けながら言ってやると、

「これが終われば、後は夜まで暇なんだ。すぐにエマに構えるようになる。もう少しだけ待っててくれ、な?」

「あ……ごめん、気使わせちゃったね」

「使ってなんかないさ」と、戒斗。「ただ、やっとかなきゃならないんだ。それだけは詫びとくよ、エマ」

「えへへ……」

 何処か照れくさそうに笑うエマがまた離れていくのを横目で見送って、それから戒斗は珈琲を何度か啜り、メカニクス・グローブを付け直すと殴り込みの準備に戻る。

 手に取ったM79グレネード・ランチャーはベトナム戦争時代のアメリカ製で、今ではポピュラーな40mmグレネード弾を撃ち放つ代物だ。しかも銃身と銃床を切り落とし極端に短くしてある(=ソウドオフ)から、取り回しもデザート・イーグルのような大型拳銃、或いはキャリコM960Aのようなピストル型サブ・マシーンガンの感覚に近い。単純な構造故に信頼性も高く、戒斗にとっても慣れ親しんだ品だ。

 それの分解清掃と動作確認を終えれば、戒斗は最後にガーバー・マークⅡの鞘を手に取った。

 グリップを握り、ロックを解除して鞘から引き抜く。すると現れるのは凶悪な見た目の諸刃のブレードだ。念の為に研ぎ直してあるし、何度か振るって感覚も確かめてある。最後に頼れるのは、やはり拳銃よりもこうした刃物だ。最後の最後に命を託すならば、やはり使い慣れたマークⅡが一番相応しい。

「……今夜、決着を付けてやる」

 ゆめゆめ覚悟しておけ、リー・シャオロン――――。

 窓の外から差し込む陽の光に反射する、諸刃のブレードの煌めき。それは何処か、戒斗の覚悟と決意の色にも似ていた。

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