Execute.127:STRIKE ENFORCER./旅路の果て、遠い記憶を辿って①
空港ターミナルの外に待ち構えていた、香華が西園寺財閥の力で用意してくれたハイヤーに乗り込み。三人が乗り込んだハイヤーは、シカゴ市の中心部の方へと走り出した。
「わぁーっ……凄いね、首が痛くなりそうだよ」
車窓の外を流れていく、シカゴの高層ビル群たち。L.Aとはまた違う街並みをハイヤーの窓越しに眺めるエマが、楽しそうにひとりごちる。戒斗はそれを横目に眺めながら、表情を緩めながら。「かもな」と彼女に相槌を打ってやる。
そうして、ハイヤーに揺られること数十分。黒塗りのメルツェデス・ベンツのSクラスで一行が連れて来られたのは、シカゴ中心街にほど近い場所にある、とある高級ホテルの目の前だった。
此処が、香華が特急で用意してくれたシカゴでの宿泊先だ。フロントでの受付もスムーズに済み、部屋はどうやら上層のスウィート・ルームらしい。エマの警護面を考慮し、流石にクララも同室だが。どうやらベッドルームは幾つかある大きな客室のようだから、問題は無さそうだ。
「僕はこっちの部屋を貰うよ。君たち二人は、そっちで良いんじゃないかな? ベッドも大きいしね」
案内してくれたボーイにチップを渡し追い返した後、部屋割りを決めている最中にクララがニヤニヤとしながら言ってくる。そんなクララにエマが「クララさん……! もうっ!」と少しだけ顔を赤くしていたのを、戒斗はすぐ傍らで苦笑いしながら眺めていた。
「今日はゆっくりして、明日は色々と調達して回ろう。シカゴには僕のツテも色々とあるんだ」
「右に同じく、だクララ。俺もちょっと昔馴染みが多いからな、武器の融通は効く」
とりあえず、ナイフや拳銃などの必要最低限の獲物は護身用で持ってきているが。しかし幾らプライベート・ジェットといえど、武器弾薬が潤沢と言えるほどまでは持ってこられていない。
そういうワケで、明日は必要になりそうな物の調達に出よう、という話になった。今日一日は、ひとまず休養することにして。本格的に動き出すのは、明日からということになる。
――――翌日。
先にホテルを出た戒斗は、レンタカー屋で借りてきた2014年式の白いシボレー・カマロでホテルの前に乗り付け、出てきたエマとクララを乗せると、朝も早々からシカゴの街へと繰り出していく。
戒斗が借りてきたカマロは、屋根が折り畳める布の幌なコンバーチブル・タイプの……まあ、要はオープンカーになるタイプのモデルだった。観光客ウケを狙ってか、通常の屋根なファストバックは無かったのだ。
それに、エンジンも三・六リッターでツインカムのV型六気筒で、ギアボックスも六速オートマチック。アメ車にしてはあまりに大人しすぎる乗り味に、ハイパワーなアメ車慣れしている戒斗は不満を覚えたが。しかしレンタカーに言うのも酷だと思い、敢えてそれを口にはしていない。
尤も、大人しいといっても"アメ車にしては"だ。普通に考えれば十分すぎる程のパワーがあるし、オートマチックのギアボックスも中々に優秀に思える。この狭いシカゴの街を流す分には、これで充分なのかもしれない。
「カイト、まずは何処へ行くの?」
後部座席、戒斗の真後ろに座るエマが小さく身を乗り出しながら問うてくる。屋根の幌を開いてオープン状態にしているからか、巻き込んでくる風に彼女の金糸めいたプラチナ・ブロンドの髪が、ふわふわと揺れているのがバック・ミラー越しに戒斗からも見て取れる。
「君のアテから先に消化すれば良いよ、カイト。僕の方はあくまで押さえだからね。君の方で僕らの用事が全部済んでしまうのなら、それに越したことはないからさ」
「そいじゃあ、お言葉に甘えて。そこまで遠くないから、すぐに着く」
助手席に座るクララの提案に従い、戒斗はまず自分のツテの方から先に辿ることにした。
向かう先、目的地には電話でアポも取っていないし、それ以前に生きているか死んでいるのかも分からない相手だが。しかし、行ってみないことには始まらない。何せ、戒斗がシカゴに持っているアテらしいアテといえば、思い当たるのはそこと……後は、数件ぐらいなものだから。
「確か……あの辺だったな」
戒斗はステアリングを切り、白いノーズの向きをクイッと変える。幌を開いた白いカマロの鼻先が目指す先は、北ミシガン通りだ。




