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Execute.126:STRIKE ENFORCER./旅路の果て、足跡を辿り

 それから、更に数日が経過し。戒斗とエマ、そして何故かクララまでをも伴う形でL.Aを発った三人は、昼頃にはもうシカゴ・ミッドウェイ国際空港に降り立っていた。

 L.Aのある西海岸のカリフォルニア州から、中部イリノイ州までは凄まじい距離がある。折角のダッジ・ヴァイパーGTSとすぐに別れる羽目になったのは、戒斗にとって名残惜しいところがあったが。しかし移動時間の短縮などを加味して、今回もまた西園寺のプライベート・ジェット機で此処まで飛んで来ていたのだった。日本から来るときと同じく、機種はガルフストリーム・G550で。車での陸路なら数日掛かるところを、僅か数時間のフライトで済んでいる。

「思ったより、結構暑いね……」

「そうかい? 気候の関係で、夏は結構暑くなるからね。エマちゃんのイメージと違うのも、まあ無理ないかも知れないか」

 駐機したプライベート・ジェットのタラップから降りたエマの、青々とした蒼穹(そら)を仰ぎながらポツリと呟いた言葉に。先に降りていたクララが、フッと小さく笑いながらで頷いていた。

「エマちゃんは、シカゴは初めてかい?」

「うんっ」振り向くクララに、タラップを降りながらで頷くエマ。

「西海岸は、知っての通り前にカイトが連れて来てくれたけれど。それ以外は基本的に行ったことはないかな、僕は」

「ふっ、そうかい。だったら暇を見て、色々と観光案内もしてあげようじゃあないか。

 ……まあ、尤も? そこの万年仏頂面が、僕がエマちゃんをエスコートすること、許してくれればの話だけれどね」

 皮肉っぽい表情と視線を戒斗の方に向けて、ニヤリとしたクララがやはり皮肉めいたことを言う。

 それに、真っ先にプライベート・ジェットを降りていた戒斗は小さく振り向いて。刺すような日差しに眼を細めながら、「あのなあ……」と溜息を交えてクララに視線を合わせる。

「クララ、君は俺を何だと思ってるんだ?」

「過保護」

「ぐうの音も出ない回答はやめてくれ」

「だって、事実だろう? 言い方はちょっと悪いけれど、君のこの()に対する保護は異常で過剰だよ? そりゃあ、君にとってエマちゃんが何よりも大事なのは、僕だって分かっているつもりだけれどさ」

 物凄く微妙な顔を浮かべる戒斗に言うクララは、冗談っぽく……ながらも、ほんの少しだけの真剣さをも交えたような語気だった。

「……分かっているなら、これ以上言ってくれるな」

 それに戒斗は、平静を装う口調で返しながらも。しかしその横顔に、ほんの僅かな影を差す。それは決して、日差しの強烈さから来る影色ではなかった。

「過保護なのは、俺自身が一番よく分かっている」

 ――――それでも、喪いたくない。もう二度と喪いたくない。だから、分かった上でそうしている。他ならぬ、俺自身が。

「カイト……」

 エマは、彼の横顔から。彼が胸の内で思うことを、言葉を介さないままに察してしまう。

 それでも、彼自身の横顔が、それ以上の言及を拒んでいた。そしてエマも、今更どうこう言うことでもないと、分かっていた。

 だからこそ。エマは彼の名を呼ぶだけで、これ以上のことを戒斗に言うことはしなかった。

「……ま、観光案内に関しちゃ、別にクララが一緒に行くなら構わないさ。エマの行きたいところに連れて行ってやってくれ。暇を見て、行けそうなら俺も合流するから」

「なら、決まりだね」

 少しの沈黙の後で、わざとらしく肩を竦める態度で戒斗がサッと折れると。クララはニッと笑い、振り返ってエマの方に眼を合わせてきた。二人で、うんうんと頷き合う。

「えっへへー、クララさんに案内して貰えるのかぁ♪ 楽しみだな、すっごく♪」

「ま、とにかく今はさっさと空港を出るとしよう。また西園寺のお嬢様が色々と用意してくれているみたいだから、話はそこに着いてからだ。

 …………さ、行こうかカイト。それに、エマちゃんも」

 先を行くクララと、その後ろを数歩下がったところを、エマに手を繋がれる格好で戒斗が横並びに歩き出す。

 強い日差しに照らされて、雲一つなく青々とした蒼穹(そら)を見上げて。微かな陽炎の揺れる滑走路を遠くに、こうして三人はシカゴでの最初の一歩を踏み出していく。因縁の場所での、久方振りの足跡を刻むように。

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