Execute.123:STRIKE ENFORCER./Supremacy
階段を、キャットウォークへと続く、錆びた鉄の階段を駆け上る。
「あそこだ!」
「構わねえ、撃ち殺せ!」
「ああ、くそ……!」
カンカンカン、と派手な足音を鳴らして駆け上った戒斗は、後方から聞こえてくる怒声と足音に気付き、すぐさま目の前に向かって飛ぶ。数人の男たちの手で抜き放たれた拳銃の多重奏が階段の下から響き、一瞬前まで戒斗の居た辺りの空気を、幾つもの9mmパラベラム弾が切り裂いた。
飛んだ戒斗は着地と同時に振り返り、後を追って昇ってこようとする奴らにSCARを構える。SCARのサイレンサーが着いた銃口と眼が合った男たちは途端に逃げようとしたが、遅すぎた。
サイレンサーで抑えられた、しかし強烈なライフルの銃声が木霊する。一撃一撃の反動が恐ろしいほどに肩へと食い込んでくるが、しかし戒斗はそれを一発ずつ丁寧に、しかし素早く制御し。一人につき二発ずつを叩き込む格好で、四人をつるべ撃ちの如く一瞬で片付ける。
(今の内に……!)
そうやって追っ手の四人を排除した瞬間、戒斗はまた踵を返して走り出しながら、半ば無意識の内にSCARの弾倉を足元へと棄てていた。
まだ、棄てた弾倉の中には中途半端に弾が残っているはずだ。だが残っていても残り数発といったぐらいのはずだ。少なくとも、戒斗の感覚はそう訴えている。
それに、SCAR-Hの弾倉容量はたった二〇発だ。普通の5.56mmの三〇連発とはワケが違う。一撃の威力が大きい分、カートリッジも大きく。その分装弾量が減るというワケだが、とにかく接近戦を仕掛けるライフルにしては、手数に乏しいのは事実だ。
だから、戒斗は早めに弾倉を変えておくべきだと、豊富な経験からそう判断していた。だからこそこうして中途半端に残った弾倉を棄て、胸のチェストリグから取り出した新しい弾倉をSCARに叩き込んでいるのだ。
――――タクティカル・リロード。
或いは、こう呼ばれるテクニックなのかもしれない。弾倉を回収せずに棄ててしまっている辺り、どちらかといえば緊急時のエマージェンシー・リロードに近いが。だが多勢に無勢、独りで多数の敵を相手にしなければならない以上、再装填の隙はコンマ一秒でも減らしたい。ケチケチして弾倉を回収する間に、撃ち殺されてしまったら洒落にならないのだ。
戒斗の得意とする、一対多数のゲリラ戦闘。ましてこういった閉所空間内での戦いというものは、如何に隙を減らすかで生死が分かれる。戒斗はその豊富な実戦経験から、それを知っていた。だからこそ、こういった行動に出たのだ。
そうして、倉庫の高い位置を這う通路、キャットウォークを駆け抜けながら。押し寄せてくる幾多の敵にSCAR-Hで応戦し、そのすべからくを7.62mm大口径ライフル弾の洗礼で返り討ちにしながら。戒斗はチラリチラリと、眼下にある倉庫スペースの方を覗き見ていた。
遠目に見た限りだが、やはり当初の予想通り、あるのはAK-47なんかの小火器が殆どだ。丁度良い具合に即席爆弾として改造出来るような、そんな航空爆弾の類は見当たらない。どうやら、体よく此処を吹っ飛ばして証拠隠滅、というワケにはいかないようだ。
それを思うと、戒斗は小さく舌を打った。恐らくは倉庫内の監視カメラに戒斗の姿が記録されてしまっているはずだから、レコーダーも破壊せねばならない。倉庫ごと爆破してしまえばそんな手間は要らないのだが、そうも行かない以上、それもしなければならない。
「早々上手くは行かないもんだ、畜生め……!」
独り毒づきながら、戒斗は弾の切れたSCAR-Hの銃把から手を離し。弾切れのライフルをスリングで首から吊しながら、右手でグロック19を抜く。
「……ま、いつものことか!」
そうして、ダブルタップ気味に一人二発ずつの9mmパラベラム弾を見舞う形で速射し、キャットウォークに昇ってきた五人を一気に射殺する。
「嫌だ嫌だ、さっさと終わらせる!」
と、グロックで応戦している内にソイツの弾も切れ。ホールド・オープンしたスライドを元に戻しながらグロックもホルスターに仕舞えば、戒斗は後ろ腰に収めたキンバー・K6Sのリヴォルヴァー拳銃を左手で抜き、構える。
「さてと、此処がお目当ての!」
そして、邪魔なSCAR-Hのスリングを肩から外し、一旦足元にかなぐり捨てて。戒斗は目の前の扉、二階部分の事務所の扉に狙いを定めれば、タクティカル・ブーツに包まれた脚で一気にその扉を蹴り開けた。




