Execute.122:STRIKE ENFORCER./Identity
恐る恐る扉を開き、片手のグロック19を油断なく構えながら、戒斗はその先へと足を踏み入れる。
だが幸いなことに、その先に誰の姿も無かった。扉を後ろ手に閉めた戒斗は「ふぅ」と小さく息をついて、グロック19をホルスターに戻し、改めてSCAR-Hを構え直す。
「出来ることなら、静かに終わりたいもんだ」
と、戒斗がそんなことをひとりごちながら、SCARを構えつつ。さあ進もうとした、その時だった。
「うおっ!?」
「ッ――!」
一階部分の廊下へと続く曲がり角、そこで運悪く、ヒトと出くわしてしまったのは。
「畜生!」
その男……北欧系の彫りの深い顔立ちをした男は、重武装で身を固めた戒斗の姿を一目見るなり、目の前の不審者をすぐに敵と判断したのか。一歩飛び退きながら、右手を右腰へと走らせる。
明らかに拳銃を抜こうとしていた。この反応速度と判断の速さからして、相応の経験者だろう。即ち相手は、クリムゾン・クロウ残党の一人だ。
……なら、遠慮は要らない。
「!!」
その男が兼銃を抜くよりも早く、戒斗はSCAR-Hを構え。何よりも早く親指でセイフティを咄嗟にフルオートの位置まで弾き下ろせば、間髪入れずに引鉄を引いた。
殴り付けるような重い反動が断続的に襲い掛かってくるとともに、サイレンサーで抑えつけられた……しかし、それでも尚やかましい大口径ライフル弾の銃声が木霊する。
そうすれば、戒斗が右眼で見る視界の中。EXPS-3ホロサイトの赤く大きな光点を通して見る射線の先で、7.62mm口径の重いライフル弾に身体を抉り飛ばされた北欧系の男が、後ろっ飛びに吹っ飛ぶようにして斃れるのが映る。蹴り出された幾つもの空薬莢がカランカラン、と音を立てて戒斗の足元に転がり落ちる頃、既にその男は息絶えていた。
「言ってる傍から、これかよ……!」
取りあえずの窮地は脱した。脱したが、今の銃声は間違いなく倉庫中に木霊した。幾らサイレンサーで抑えつけたといっても、亜音速に留めてすらいない大口径ライフル弾の銃声、気付かれないはずがない。
そうして戒斗が毒づいている傍から、すぐさま倉庫中からざわめきと物凄い足音が聞こえてくる。突然の銃声に飛び上がった他の連中が、何事かと思い拳銃を抜きながらこっちに大挙して押し寄せてきているのは明らかだ。
「こういうの、ミリィなら何て言うんだっけか。……フラグ、だったか?」
静かに終わりたいと、そう言った傍からこの始末だ。こういうパターンは、ミリィの言うところのフラグ、という奴なのだろう。例えば、「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ」的な具合の、そんなサムシングだ。
これが合っているにせよ間違っているにせよ、嫌なジンクスに当たってしまったな、と戒斗は言葉を介さないままで独り毒づいた。出来ることなら手掛かりだけ漁ってさっさと退散したかっただけに、最悪の気分になってくる。
が、現実としてこうなってしまった以上はやるしかない。戒斗は覚悟を決め、SCARのセレクタを単発射撃のセミオートへと切り替えると、すぐに走り出してその場を離脱する。
こうなってしまったら、もう一階の狭い廊下からちょこちょこと忍び寄る必要もない。敵を殲滅しながら一気にキャットウォークを駆け上り、事務所に突っ込み、手掛かりを頂いてこの倉庫を吹き飛ばすまでだ。武器弾薬が豊富にある場所らしいから、何か即席で爆弾に出来るような物があれば良いが。




