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Execute.121:STRIKE ENFORCER./エクストリーム・ウェイズ

「よし……」

 目的地の倉庫、クリムゾン・クロウ残党が拠点としている倉庫から多少離れた場所の路肩にヴァイパーを停めた戒斗は、エンジンを切った深紅のマシーンから降り。開けたトランクの中に収めていたSCAR-Hを初めとする装備を身に着ければ、小さく息をつきながらヴァイパーのトランクを閉める。

 羽織るジャケットの下、ポロシャツの上から胸に吊すチェストリグの弾倉ポーチに、SCAR用の大きな予備弾倉が収まっているのを手の感触で確かめ。SCARの方もスリングを肩に掛け、銃口部のサイレンサーの取り付け具合を確認し。最後にコッキング・ハンドルを引き初弾を装填すれば、セイフティを掛けたソイツの銃把を深く握り直す。

 思い返せば、私事で鉄火場に赴くのは久方振りだ。ここ最近はずっと、日々谷の方でばかりそんな場に赴いていた気がする。

 だからか、戒斗は不思議と懐かしい感覚を感じていた。握り締める銃把の感触が、肩に吊すライフルの重みが、日々谷で黒沢鉄男として握るときよりも、ずっと軽く感じてしまう。自分の意志で戦うことが気楽……とまでは言わないが、戒斗自身の中でちゃんと納得した上なのは事実だった。でなければ、こんなにも軽くは感じない。

 獲物のコンディションも問題なし、弾も充分に用意した。予備で拳銃も二挺、それにナイフもある。頭も冴え渡っていて、身体の方も特に不調はない。いざ鉄火場に赴こうとする上で、全く問題ない状態だ。

「……行くか」

 アナハイムに吹き付ける夜風が、西海岸のカラッとした夜風が、戒斗の肌を撫でつける。黒い髪が揺れるのと同じくして、左眼に走る一条の傷跡が見え隠れするのと同じくして、戒斗は独り歩き出した。夜の裏路地を、影から影へと消えていくかのように、ただ独り……。





「歩哨は……特になし、か」

 そして、例の倉庫のすぐ傍にまで忍び寄った戒斗は、物陰からまずは倉庫周辺の様子を窺っていた。

 外に誰か警備が立っている様子はない。他にもぐるりと倉庫の周りを一周する形で見て回ったが、何処にもそれらしき人間の気配は無かった。

 とはいえ、倉庫自体にヒトが居ないわけでもなさそうだ。天窓や高い位置にある窓から、電灯の灯りが漏れ出ているのが此処からでも見える。此処は工場地帯近くの倉庫街の一角にあるのだが、電灯が点いていて、人の気配があるのはこの倉庫だけだ。

 つまり、この一角……少なくとも一ブロックには、無関係の人間が恐らくは誰も居ないと推測される。派手なドンパチになる可能性が否定できない現状、これは好都合だ。下手に警察に通報される心配が少しでも減る分、面倒が避けられて良い。

 倉庫自体は、写真で見て戒斗が想像していたよりも大きかった。何となく、戦闘機を駐機しておくハンガーを連想させる。合衆国内であるからして、考えにくいことではあるが。変な話、M1エイブラムスなんかの戦車だって何台も隠して於けそうなぐらいに広く、大きい倉庫だ。

「入るなら……あそこの裏口からか」

 戒斗は頭に叩き込んでおいた間取り図を思い返しつつ、侵入の足掛かりとなる侵入ポイントを、丁度視界の中にある小さな扉、裏口の扉に決める。

 この倉庫の構造は少々特殊で、広い倉庫スペースと、後はちょっとした事務所を兼ねた一角が二階にあるはずだ。この裏口は一階部分の倉庫に通じていて、二階に上がるためのキャットウォーク、或いは一階部分の細々とした部屋へ続く廊下に面している。入るなら、恐らくは此処からが最もベターだ。

 戒斗は周囲を一度見回した後、やはり周囲に人影がないことを確認してから、足音を殺しつつ、しかし足早にその扉に近寄る。

 鍵穴に向かって特殊工具を差し、ものの数秒でピッキングによる解錠を完了させる。古典的なシリンダー式の錠前で助かった。これがもっと複雑なタイプだったら、もっとピッキングに時間が掛かっているか、或いは手持ちのSCARで錠前ごと吹っ飛ばす羽目になっていたかもしれない。

 とにかく、これで扉は開いた。戒斗は改めて周囲を見回した後、ドアノブに手を掛ける。

 きゅっと左手でドアノブを捻り、SCARの銃把から離した右手はグロック19の自動拳銃を抜き。そして戒斗は、恐る恐るその扉を開いた――――。

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