表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/279

Execute.117:STRIKE ENFORCER./ミッシング・エース②

 戒斗とエマはそのまま、クララに連れられて駐車場へ行き。そこに停められていた彼女の車に乗り込んで、クララの運転でロス・アンジェルス国際空港を後にしていた。

 燦々と照りつける強烈な陽光に、ほんのりと陽炎すら漂っているような灼熱のアスファルト。ロス・アンジェルス市内の公道を駆け抜けていくクララの車は、1997年式の蒼い日産・240SXだ。

 要は、北米版の日産・シルビアと思えば良い。クララのこれはS14型で、外見的には日本国内のS14シルビア後期型と大差ない。外観も内面も殆ど改造の手が入れられていない辺り、移動用のアシと割り切ってクララがこっちで調達した物だろうと戒斗は推測していた。

「久し振りだね、こうして君らとこの街を走るのも。確か二人とも、合衆国にはアレ以来、来てないんだっけ?」

「そうだな」

「そうだね」

 コクピット・シートでステアリングを握るクララに、助手席の戒斗と、そして手狭な後部座席に座るエマがそろって相槌を打つ。ちなみに合衆国は右側通行の左ハンドルだから、当然クララの座るコクピットの位置も左側だ。

「最後に日本の外に出たのは、確か……ああそうだ、日々谷に入る前。香港が最後だったと思う。だよな、エマ?」

「だね、あの時が一番最近で、一番最後だね」

「香港……? ああ、リー・シャオロンを始末してくれたっていう、あの一件か。結果的にといえ、その節は世話を掛けたね」

「良いさ、君にどうこう詫びられることでもない」

 肩を竦めてクララに言った後で、戒斗は「それより」と続け、

「セーフ・ハウスってのは、まだ遠いのか?」

「ちょっとだけ時間は掛かるよ。なにせL.Aの外れの方だからね」

 戒斗が問うと、クララは右手で掴んだシフトノブで240SXのギアを四速へと突っ込みながら、そう答えた。

「さっきも言った通り、必要な武器弾薬と移動手段はもう用意してある。資金の方も、西園寺の使いの人間が、今朝届けに来たね」

「西園寺の、か」

 続けるクララの言葉を聞いて、戒斗は何だか少しだけ申し訳ない気持ちになっていた。

 ――――香華には、昔から随分と世話を掛けられっ放しだ。

 彼女は自分に対して、戒斗に対して返しきれないほどの借りがあるというが、とんでもない。今まででとっくに貸し分は返して貰っているし、それ以上のモノを貰いすぎているぐらいだ。それ以前に、彼女に対してやったことは一部を除き、組織の命令で、即ち仕事の一環としてということだけ。個人的に協力したことがなかったとは言わないが、大半がC.T.I.Uの統合作戦本部……今は亡き上司、貝塚凛子の命の下でやったことだ。

 だから、今もこうして彼女に良くして貰っていることに、何だか申し訳なさと、一抹の気が引ける思いを戒斗は感じているのだ。西園寺の人間がセーフ・ハウスに届けたという活動資金の中には、当然葉月の出資も入っているだろうが。しかし、香華のポケットマネーも含まれているに違いない。そう思うと、戒斗は彼女に対しての申し訳なさを募らせるばかりだった。

「……ま、君のどうこうに僕が首を突っ込む権利も、それ以前にその気もないんだけれどね」

 そうしたことを戒斗が思っていると、するとクララは戒斗の横顔からそれを何となしに感じ取ったのか、隣の戒斗に向かってそんなことを口走った。いつもの外見不相応に落ち着いた声音で、視線はフロントガラスの先に見える景色を見据えたままで。

「ただ、今の君は、君たち自身の目的だけを考えていればいい。多少の些事は、全部終わった後で考えればいい。……少なくとも、僕はそう思うけどね」

「分かってる、分かってるつもりだ」

「とにかく、合衆国にこうして来てしまった以上、君のやるべきことは山積みだ。このL.A近辺だけで二箇所はあるし、別の場所も多い。僕が協力する以上、失敗は赦さないから、そう思っておくことだよ」

「……怖い怖い、肝に銘じておこう」

 クララの言った最後の言葉は冗談じみていたが、しかし静かな気迫も感じられて。戒斗は冗談半分、本気半分で参ったように肩を竦めてみせた。

「暗い話はこの辺にしておこう。ところで二人とも、道中で何処か寄りたいところはあるかな?」

「あ、じゃあさクララさん。スーパーでも何処でも良いから、食べ物を買える場所に連れてって貰えるかな?」

「構わないけれど……一応、セーフ・ハウスには僕も住んでるからね。だからさエマちゃん、ある程度の食糧ならあるよ?」

「一応だよ、一応。三人分も賄えるとは限らないしさっ」

「それもそうか。――分かったよ、適当に見つけたら寄ろう。カイト、君の方は?」

「俺は特にない。ガンショップなら独りで行けるしな。それに、クララが何を取り揃えたか分からん以上、下手な物は買えん」

「カイトの嗜好はある程度覚えているからね、下手を打ったつもりはない。

 ――――了解だ。途中でスーパーだけ寄って、そしたら真っ直ぐにセーフ・ハウスに向かおう」

 陽炎の漂う、鉄板の如く灼熱したアスファルトにタイヤを切りつけ、焦がしながら。戒斗とエマを乗せ、クララの運転する蒼の240SXがロス・アンジェルスの街中を突っ走っていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ