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Execute.116:STRIKE ENFORCER./ミッシング・エース①

 ――――ジャスト一週間後。

 戒斗、そしてエマの二人は家と車の管理をミリィ・レイスに託し、住み慣れた日本を離れ。西園寺家のプライベート・ジェットを使い十数時間の長いフライトを経た後、アメリカ合衆国は西海岸、ロス・アンジェルス国際空港へと降り立っていた。

 空港のエプロンに駐機した、西園寺の白いガルフストリーム・G550のプライベート・ジェットから一歩降り立った途端、西海岸のカラッと乾燥した空気が二人を撫でつける。燦々と降り注ぐ日差しは刺激的なんてものじゃないが、しかし湿気が無い分、日本の酷暑よりは幾分か楽に感じてしまう。

「やあ、二人とも」

 そして、税関やら入国審査の面倒な手続きを経て。空調の効いた涼しい空港ターミナルへと出てきた戒斗たちを出迎えたのは、見慣れた――しかしあまりに意外な彼女だった。

「クララ!?」

「く、クララさんっ!?!?」

 眼を見開いて驚く戒斗とエマ、二人を出迎えるべくターミナルの到着ゲートの前で待ち構えていたのは、あのクララ・ムラサメだったのだ。

「久し振りだね、特にエマちゃんの方は何年振りかな?」

 幼げながらもクールな顔立ちの中に、小さな微笑を浮かべてクララが言う。相変わらず彼女はゴシック・ロリータ風のワンピースめいた格好をしていて、体格も前逢った時と変わらず、一四〇センチ台と子供のように小さいままだ。表情の陰の多さで辛うじてある程度大人びては見えるものの、まさかこれが伝説の殺し屋だなんて、一目見たってまず誰も信じるまい。

「凄く久し振りだよっ。カイトとこっちに居た頃だから……。クララさんも可愛いままだぁ♪」

 そんな具合なクララを目の当たりにしたエマが、嬉しそうに彼女に駆け寄って抱きついた。

 一六〇センチ半ばと……まあ、割に長身の部類に入るエマに、小柄なクララがぎゅーっと抱き締められているせいで。本来の歳はクララの方が断然上なはずなのに、どうにも年齢が逆転して見える。母と子というまではいかないが、傍から見ているとじゃれ合う姉妹のようだ。ましてクララの方も、満更でもない顔でエマにされるがままにされているものだから、何だか見ている戒斗の立場としては、物凄く微妙な顔にならざるを得ない。

「でも、どうしてクララさんが?」

 と、頬ずりなんかをひとしきり堪能し終えたエマは、肩を掴んで一旦クララを放し。しかししゃがみ込み彼女と視線を合わせたままで、きょとんと首を傾げクララに問う。

「安藤葉月に頼まれてね。元々、クリムゾン・クロウの調査でこっちに来てたってことで、暫くの間は僕が君たちのガイド役になるのかな」

「君が、か。世界一おっかないガイドさんだ」

 戒斗が茶化すように、皮肉るように苦笑いしながら言えば。クララはそれに「かもね」と小さく口角を釣り上げて返し、

「君が出張ってる間、エマちゃんは僕が預かる手筈になってる。大丈夫さ、彼女の身の安全は保証する」

「世界最強のセキュリティってワケか。核シェルターより安心た、これ以上は他にない」

「えへへ、クララさんがかぁ。……また、よろしくね?」

 頷く戒斗と、その視界内でクララをまたぎゅーっと抱き締めるエマ。そんなエマにされるがままになりながら、クララは「そういうことだよ」とエマの肩越しで戒斗に言っていた。

「とりあえず、当面の……L.Aで色々と動き回る間の、拠点になるセーフ・ハウスに案内するよ。君の仕事道具(・・・・)に、それに車なんかも色々と用意してある。そこまでは僕の運転で連れて行くよ」

「頼む」

「わーい♪ クララさん、よろしくねっ?」

「はいはい、分かったって。分かったからエマちゃん、そろそろ離して欲しいな……?」

 どうやら、彼女が葉月の言っていた"協力者"。その内の一人らしい。想像していなかったといえば嘘だが、しかし意外だった。

 意外ではあるが、しかし彼女以上に――クララ・ムラサメ以上に頼りになる存在は他にない。クリムゾン・クロウの拠点とやらへ殴り込みに行っている間の、エマの身の安全の確保という意味でも、クララは確実で、そして信頼の置ける相手だ。核シェルターよりも安心だと戒斗が言ったのは、何も比喩や皮肉でなく、思ったことをそのまま口に出しただけのことだ。

 とにかく、これでひとまずは安心だ。戒斗は胸を撫で下ろしながら、何故かエマに手なんか繋がれるクララに導かれるまま、ロス・アンジェルス国際空港の駐車場へと向かい歩き始めた。


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