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「おい、はじめ坊ちゃん今回は何点だっだだよぉ〜」「今回はせんせーが平均点が20も下がったって言ってたよなぁー」
テスト返却で賑わいを見せるクラスで、ある一人の男子に向けてそんなからかうような言葉が投げかけられる。そんな言葉を投げかけられた彼は躊躇うことも無く全教科満点のテストを見せ、
「その程度で俺の価値が下がるとでも思ったか下等生物共」
絶対零度を感じさせるような声でそう言った。
俺の名前は北村 はじめ。容姿端麗、スポーツ万能、才色兼備。家は日本で有数の日本舞踊の最高峰を嗜んでいる。生まれた時からこの世界は俺の為にあり俺を中心に動くものだとそう教えられ育ってきた。さっきゴミ虫達が俺をコケにしようとした様だが全国模試トップと一般人じゃスペックが違うんだよ、出直してこい。
「あいつまた満点かよ」「俺らのコト眼中に無いみたいな顔しやがって…」
おっと、流石の馬鹿でも俺がオマエラを気にもしてないのには気付いたようだな。
スポーツ、勉強容姿ほとんどの分野において完璧なはじめは性格だけは最低だった。
◆ ◆ ◆
「ふふふ、フフフフ、ハァッハッはっはっはっ。ついに手に入れたぞ、俺のスマホだぁっっっーー」
一人はじめは自室に篭ってを喜びを噛み締めていた。
俺が此処まで喜んでいるのには高尚な理由がある。俺の家は和をとても重んじており、スマホや携帯はおろか、家電製品も使わず米は釜で炊き上げるような家なのだ。俺は別に釜で炊いた飯が嫌いなわけでもないので今まで別に文句もいわなかった。かといって、家族の様に電子機器を毛嫌いもしておらずむしろ好きな方だ。だから、俺は高校に入って自分以外の全員がスマホを使ってるのをみて元々出来ないような我慢がついに出来なくなった。なんで完璧な俺が持ってないものを彼奴らが持っているのだと。そして決意した、絶対に手に入れてやると。
だが、はじめはそこからが大変だった。家族1人ずつに数ヶ月の説得をして、考えが変わっても直ぐに戻せるように家族の中の良い人への手回し、電子機器の現代での需要の講座会など…生きてきて手に入れた知識をフル活用させて全員から許可を貰うまで、実に一年半を要した。そして今はじめの手には一つのスマホが握られていた。
はじめは様々な機能を堪能し始めてから30分、あるアプリでスワイプし続けていた手が止まった。
【魔王となって世界を手にしろ】そんな糞ゲー臭満載のゲームアプリだった。
うーん、ゲームをやるつもりはなかったが世界を手に…か、そそるものがあるな。試しにして見るか。インストールっと。
ピコンッ
【本当に魔王になりますか?世界を手にするのは大変ですよ?】
【Yes/No】
何だ、コレは……。あぁ同意とというやつか。Yesっと。
【本当に本当によろしいですか⁇】
【Yes/No】
いいと言ってるだろうが。
【最後です。本当に後悔はしませんね?】
【Yes/No】
いい加減にしろっ、次確かめてきたらもうやらんぞ。
【認証しました】
良し、いけたか。
そんな風に安堵していたはじめに突然地面から出てきた無数の白い手が絡みついた。
「なっ、なんだコレは⁈クソッ離っ‼︎」
そのままはじめはスマホごとなす術も無く地面の中に引きずりこまれて行った。
2話楽しんでいただけましたか?