お腹空いた。
久々に小説書くのでプルプルしながらも投稿。
敬語を使う執事さんが猫が大好きっていう小説書いてみたかっただけなんや……。
ちょっとだけ言葉直しました。
何でこんな事になってんだろう。
そう頭の片隅で思いながら、身体は必死に駆ける。
どれくらい走っただろうか。
もう後ろの気配は無いが、それでも焦燥感が消えず、前へ前へと脚が無意識に動く。
そうして意識が途切れる直前、暖かい光が見えた。
◇◇◇◇◇◇
光が溢れて眩しい。
そう感じて頭に行き着くまで時間がかかったが、ゆっくりと瞼を開けると、そこは見たことがない部屋だった。
(……ここは…)
夢か……。そうか、そうに違いない。そうと決まれば二度寝だ。
もう一度寝ようとすると、なにやらふわふわとした感触が身体に包まれている事に気付く。が、眠気に勝てず彼女は二度寝した。
そうして陽がもう少し高くなった頃、再び目が覚めた。
(……あれ?またこの部屋……)
二度寝する前と何も変わっていなかった。
(……夢じゃ無かったの?)
自分が今いる部屋は綺麗に掃除された部屋で、調度品も質素だが良い物だと分かる。
そして今自分がいる所はふわふわとしたクッションの中にいた。
何故自分がこんなところに居るか謎だったが、それに応えるようにドアが開かれた。
現れたのは銀色の髪を適度に撫で付けた美丈夫だった。片方の前髪だけ少し長い。瞳の色は……赤みがかった紫だろうか。陽の光で輝いている。
しかも服は黒の燕尾服で胸ポケットには懐中時計が入っているであろう銀のチェーン。
執事さんですね。分かります。
…………。
何故執事さんがここに?
「あぁ、おはよう。もう身体は大丈夫かな?」
低い声で私に目を向けながら、嬉しそうに近づいて来るので少し警戒してしまったが、彼はその事を気にすることなく、1歩離れた場所で腰を下ろした。
「昨日この屋敷の裏の森で君を見つけたんだよ。身体中傷だらけで気を失ってたんだ。それで気になってここに連れて来てしまった。ごめんね」
そう言って警戒させないようにゆっくりと手の平を近付けて頭を撫でてくれた。
優しい撫で方でとても心が落ち着く。
「それから君が寝ている間に回復魔法はかけておいたんだが、大丈夫そうだね」
おお、通りで身体に痛みが無いと思った。なんて良い人なんだ。警戒心持ってしまったのが申し訳ない。
取り敢えずありがとうと言っておく。
「……お礼を言っているのかな。なら、どう致しまして。君は賢い子のようだね」
そりゃちゃんと貴方の言葉理解してますから。
「……あぁ、もうこんな時間か。そろそろ旦那様の朝食の準備に取り掛からないと。また後でね」
お仕事ですか。行ってらっしゃい。
にこにことご機嫌な様子で私を見ながら扉を閉めて行きました。猫好きなんだろうか、あの人。
……あ、今言っちゃいましたが、私猫です。
今は、ですけど。元はちゃんとした人間ですよ。諸事情でこんな姿になってますがそれはまあ今後ゆっくりと説明します。
さっきから彼の会話では猫と同じく『ニャア』としか言えてないです。まあ返事してたから賢い子認定されてましたが。
取り敢えずどうしましょうか。
追われている身ですし、さっさとここから出て行ったほうが良いとは思うのですが……。
あの執事さんが少し気になってしまいます。
猫好きのようでしたし、勝手に出ていったら悪いでしょうか。
それに一晩泊めてくれた事もあって罪悪感が募ります。
ぐ~~~~……。
どうしようかと悩んでいる内にお腹が鳴ってしまいました。
誰も聞いてなかったのは幸いでしたが恥ずかしいですね……。
……追手の事は気になりますが、そんなにすぐ見つかるわけでもない……と思いたいですね。
まあなんにせよ。
『ニャオゥ(お腹空いた)……』
◇◇◇◇◇◇◇
ベルティアス公爵家の朝は早い。特に使用人にとっては。夜明けとともに静かに動き出す。朝起きたら身形を整え、旦那様の朝食の準備に加えて使用人の賄い。公爵家ともあって使用人の数は多い。
そんな使用人を統一し、役目を与えているのはこの屋敷の家令兼執事、ノクティス・ガルダンだ。
彼の朝は身形を整えた後、使用人、料理人に指示を出し、朝食の準備を確認した後、この屋敷の主を起こす事が役目だ。
「失礼します、おはようございます旦那様」
「うーーーん……」
「旦那様、早く起きてください」
「…もうちょっと……」
「…………」
こうなっている旦那様は何をやっても無駄だ、乱暴なことをしなければ。
「失礼致します」
彼はそう言うと主人の下に敷いてあるシーツを勢いよく引っぺがす。
「ん……うぉおっ!?」
引っぺがされた勢いでノクティスがいる反対側のベッドの脇に転がり落ち、身体を打ち付けるのはいつもの事だ。
「……ん~~…おいおい……何だってんだよ」
「おはようございます、旦那様。もう朝食の準備は終わっていますよ」
漸く目を覚ました主人にしれっと挨拶をしながらシーツをキチンとたたむ執事。
「……ったく、もっと優しく起こせんのかお前は」
「そんな事をしたら旦那様の起床時間がもっと遅くなると思いますが?」
さらっと否定しない己の執事に主人は溜息を吐く。
……ここに女性が居るならば別の意味でうっとりとした溜息を吐くだろう。
この屋敷の主人、グラディオス・バルト・ベルティアス公爵も美丈夫で、陽の光を浴びて輝く金の髪、伏せられた瞼の奥には蒼の瞳。
地位も高く王家と懇意で輝くような美丈夫、貴族令嬢なら涎ものだ。
そんな肉食令嬢を幼い頃から垣間見て恐れているグラディオスは極力夜会に出ないようにしているが、顔も知らない令嬢が伺いも立てずに直接妻にしてくれと願い出てきたのは最近の話だ。勿論断ったが。
閑話休題。
ノクティスはグラディオスの服を見立て、さっさと朝食を食べさせ仕事に行かせようとしたが、昨日の夜見つけた、小さな黒猫の存在を思い出した。
「そういえば旦那様、昨夜黒猫を見つけたのですが、私の部屋で飼っても宜しいでしょうか」
「はぁ?黒猫?……まあ別に飼っても良いんだが、夜によく見つけたな」
「地面に倒れていたのと、血の匂いで分かりましたから」
「……怪我してたのか?」
「ええ、もう治しましたよ」
「そうか……、なあその猫」
「見せるのはまた今度で」
「はぁ!?何でだよ!」
「まだ少し警戒していたので、旦那様に怪我をさせてはいけません」
至極真っ当な事をはっきりと口にしたが、グラディオスは彼の心中が分かっていた。
「……とか言ってるが、俺に懐かないように妨害したいだけだろ?」
「当たり前です」
「……この猫好きめ」
「褒め言葉ですね」
「…………」
そう、この重度な猫好きがなければ既に女性を娶っていただろうに……。
主人よりも女性よりも猫を取る残念な執事、それがノクティス・ガルダンだった。
誤字、脱字をご報告してくださると嬉しいです。
最後まで読んでくださってありがとうございました。