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帰路


帰り道。僕らは家まで送ってもらうついでに千里さんからあの霊の女の人について知ってることをいくつか聞いた。



七重(ななえ) 八重(やえ)



これが彼女の名前らしい。これも元常連客に話を聞いたとか。


店は「Octet」という名前でどうやらジャズバーだったらしく、楽器がなかったがステージがあった理由が頷ける。



さすがに30年も前なのでバンドをしていた僕でもその名前は聞いたことがなかった。




そして陰陽師についてもいろいろと聞かせてもらった。どうやらあのバーで見せてもらった札は「式札」といい、式神というもの召喚して退治を行うらしい。



僕がジンさんに求めた理想の成仏のさせ方とほぼ一緒だった。



でもこんな普通の世界でまさか式神というものが存在しているとは思っていなかった。安倍晴明っていう陰陽師が昔いたってことは知ってはいたけど式神を使っていたなんて全然信じてなかったし、幽霊の存在すらも信じてなかったのに。



でも幽霊や陰陽師の存在が今まさに僕を挟むような形でいるのだから信じざるおえまい。



「あっ、ありがとうございます。ここで」



アドヴァンス田中という文字が大きく書かれた、あらゆる所が錆びまくっている古めのアパートに着いた。この202号室が僕の家だ。




「アドヴァンス(進化する)田中ねぇ。ずいぶんたいそうな名前だけどまったくアドヴァンスしてないじゃない。」

「いやぁ、そうですよね。がんばってほしいですよね、田中」




僕は苦笑しながらこのアパートの残念さを話した。



すると日傘が先に錆びれた階段を昇っていく。




「もう帰るわよ。じゃあねスーツBBA」



だいぶさっきのが堪えたらしい。ずいぶん疲れたような顔して静かにゆっくりと202号室に入っていった。



「すいません。僕も帰らせてもらいますね。今日はありがとうございました。」

「いや、私もごめんね。初めてにしては少しひどいものをあなたたちに見せてしまったみたいね。」




千里さんは申し訳なさそうな顔をして僕に手を振った後、帰って行った。




僕も階段を昇り自分の部屋のドアの前まで歩いていった。ドアの前とはいったがそういえば千里さんに吹っ飛ばされて僕の部屋の防犯率は0に等しくなっていたんだった。



また大家さんに連絡しないとなとマスクを外して、ため息をつきながら肩を落とし、部屋に入る。



日傘は僕のベッドの上に寝転んでいた。小さな背中をこちらに向けており、ショックが大きいんだなとーーー




ブゥーーッ




静寂を切り裂く爆発音が鳴り響いた。いわゆるオナラというものだ。匂いは感じなかったが日傘が出したのはたしかだろう。僕はあの綺麗なお尻から出たということに少し興奮をおぼえながらも僕の威厳を保つために




「おい日傘!お前いまオナラしただろ!女の子だろ?幽霊だろ?どういうことだよ!」



少し怒った感じで言った。日傘は少し目をウルウルさせながらコッチを見てきた。堪らん。



「あたしはオナラなんてしてない!女の子がオナラするわけないでしょ?」

「いやでもブゥ〜って聞こえたぞ?」

「あれはブゥ〜じゃなくてピョンって鳴ったの!オナラじゃなくてウサギさんがお腹すいたよ〜って一茶に言ってたの!」



いやそれならグゥ〜だろ...と心の中でツッコミをいれ、「わかったよ」とキッチンに向かう。



日傘はめちゃくちゃ落ち込むと少し子供っぽくなる。こういう時は素直に日傘の言うことを聞くのが1番面倒なことにならない。というより可愛すぎてつい言うことを聞いてしまうのだ。




僕が毎度興奮するこの日傘の状態を

「メルヘンメンヘラ」

と名付けている。










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