連絡
翌日
8月14日 午後2時 夏
周りに建物はなく、防御力が0に等しい僕に日差しが攻撃してくる。 暑すぎて地面が熱をもち、道路上が歪んでいた。
額から流れてきた僕の視界を邪魔しようとする水滴を腕拭い取る
「そりゃ暑いでしょあんた。なんで夏なのにマスクしてんの?馬鹿なの?」
歩きながら日傘が横から話かけてきた。
さすがの幽霊も足があるから歩くみたいだ。
「うるさいな、僕はできるだけ人に自分の表情を見られたくないの!コミュ障なの!てか外で話しかけんなよ、変な人だと思われる。」
こいつは僕には見えるがやはり幽霊、他の人には見えないらしい
「いや、こんな暑さなのにマスクを付けてる時点であんただいぶ悪目立ちしてるからね。わたしは暑さ感じないんだけどさ」
と日傘は呆れた顔で言ってくるがなんでこいつこんなに毒舌なの?
まあこんなところも大好きなんだけどさ
「ところでさっ、なんで急に外出したの?あんたはバイトの面接以外の時あんまり外にでたがらないじゃない」
「外は嫌いだよ。暑いし人酔いもするしね。でもちゃんと用事はあるんだよ。」
日傘はしかめっ面で僕を睨んでいたが、何かを思い出したと言わんばかりに頭上に電球が光るマークが出てきて手をポンッと叩いた
どうやら幽霊の表現力はかなり高いようだ。
日傘はにひひっと小悪魔な表情を浮かべ
「おめでとさんかな?ん?」
「なんのことだよ?」
「さては貴様...三ヶ月ぶりにバイトの面接に受かったのだろ!!」
「...た」
「えっ?」
「面接なら落ちた!さっき電話来てたろ?面接落ちたって報告だったんだよ」
・・・
少しの沈黙から ハッと日傘は我に返って
僕の肩をポンポンとたたきながら
「ドドドドドドンマイ!ままままままだチャンスはあるさ!つつつつつつつつつぎは絶対受かるって!」
いつ聞いても素晴らしい滑舌だな。
僕はこれを聞くためだけにバイトに落ちているのかもしれない。
「だったらなんで外出するわけ?」
「それはね、今日傘が僕の肩を叩いてる現象を解決するためだよ」
「???」
そう、先ほど電話は2回来ていた。ひとつは面接落選の報告電話、そしてもうひとつは歩道と名乗る霊専門の人からの電話だった。
...まさかとは思うがゴーストをバスターする未来がなくはないのかもしれない
内容はこうだった
『貴方には今、女の霊が憑いてますね?わたしは霊専門の者です。まぁ霊が見えるんで成仏、退治の仕事をしているわけです。話だけでもどうですか?もしよろしければいつでもいいので○○像の付近にある積山書店という場所に来ていただけませんか?待ってます』
声は女の人だった。普段あんまり喋らないのか声は小さめで緊張が伝わってくるようだった。電話のはずなのに僕は喋る暇もなく、まるで留守電を聞いてるような淡々とした喋り方で、話し終わったらすぐ電話を切られた。
うーむ、この人なかなか好みのタイプかもしれない...
とまぁ電話の内容だけを日傘に説明した。
「ふーん、わたしには内緒で勝手に話を進めているわけね。ふーーーん」
「悪かった悪かった。でもいつかは...」
「もう知らん!フンする!」
「おちゃめかよ」
僕は日傘の頭を撫でるフリをした。
そういえばなんで日傘は幽霊なのに僕に触れることができるんだろ?僕から触ろうとしても全て通り抜けてしまうのに...
まぁそのことはまた積山書店についてから知ることになるだろうと僕は歩みを進めた。