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見解



「人生とは物語だ。」

「どうしたんですか?急に...」


今日朝起きてから僕たちはジンさんのとこに訪ねていた。共鳴するにはどうすればいいのか聞くためである。そしたらジンさんは「ちょっと外歩こうか」と言い、今に至る。


すれ違った50代か60代くらいのおばあさんがこちらを妙な顔でみている。


外から見れば、こんな暑い日差しの中、派手なおっさんと根暗な兄さんの全く似つかない二人が散歩している奇妙な姿となっているからだろう。実際は日傘がいるんだけれども。



「人生とは物語だ。」

「なんで2回言ったんですか。」

「なんだかタイミングをまちがえた気がしてね。私的には一茶くんが深い!って感じな顔をすると思ったのに全く違う反応したから少し恥ずかしくなっちゃった。」

「...それでその名言的な言葉の意味は?」


ジンさんは小さいため息をつき、ニコリと笑って話を続けた。


「人生っていうのはね、ハッピーエンドにするにもバッドエンドにするにも主人公次第なんだよ。大体はね。

「例えば孫や妻に囲まれた老人が静かに息を引き取る、これはハッピーエンド。自殺や恨みを買って殺されるのはバッドエンド。

「だけれどたまにそういうの関係なく死んでしまう人がいるのも確かだ。そんな人たちを霊という延長線でちゃんとした終わりを迎えさせてあげるのが僕たち霊能力者だよ。たとえそれがバッドエンドだったとしてもね。

「僕が言いたいのはね、一茶くん。君がたとえ八重ちゃんを救えなかったとしても気にする必要はないってことだよ。人生とはいろんな終わり方がある。物語と一緒でね。だから結果や過程は気にせずに君の信じた方へ歩んで行ってほしい。」

「・・・」


どうやらジンさんは僕のことを気にかけているようだ。だけれどなぜだろうか、同時に違和感を覚えた。


それがなんなのかはわからないがジンさんが「今日言ったことはまだ胸にしまっておくだけでいいよ。すぐに分かるようになるさ」と僕の考えを察したように言われたので考えるをやめた。



「ちなみに日傘ちゃんのことだけどね、共鳴は別に練習するまでもないと思うよ。」

「どういうこと?」


日傘が突っかかるように聞き出したのでジンさんは少し戸惑いながらも答える。


「共鳴なんていうのは霊の本能的なものだよ?練習するまでもなく、もうすでに一茶くんが気づかない内に共鳴しているはずだ。私が言ったのはそういう意味だよ。」

「じゃあ私が昨日やったのは無駄だったってわけだ...ふーん。」


日傘の痛い視線が僕に突き刺さる。


ジンさんがどういうこと?という顔でこちらを見てきたので昨日のことを話すことにした。


「かくかくしかじかです。」

「...いや、わからないよ?端折らないで?」



漫画ならこれで伝わるのに、まったく現実というものはこれだから嫌いだ。


「前にジンさんから共鳴の事を聞いた時に僕が思いついたんですけど日傘の共鳴で七重さんと会話みたいなことができないかなと思って、昨日一日中、日傘の共鳴の練習したんですよ。」

「ああ、そういうことかい。その考えは悪くないかもしれないね。だけど一つ問題がある。」

「なんですか?」

「八重ちゃんの共鳴の重さに日傘ちゃんが耐えれるかどうかだよ。前と同様の痛みに襲われるだろうね。2人だと共鳴の強さは比べるなら初心者と熟練者だ。下手したら日傘ちゃんが退治されるのと同様に消滅してしまうかもしれない。」



僕はそれを聞いた瞬間、この方法を諦めた。日傘とはまだ短い付き合いだけれど今の僕にとってはかけがえのない存在だからだ消滅させるわけにはいかない。


が、日傘は逆に燃えてしまったようだ。



「変なことを考えるなよ。」

「私がやらないのなら誰がやるの?この方法しかないんでしょ?」

「そうだけど他に方法があるかもしれないだろ?」

「とっくに限界を超えている八重ちゃんをまだ待たせるの?」

「・・・」


こうなった日傘を僕は止めれたことがない。諦めるのを諦めるしかないみたいだ。僕は「無理だけはするなよ」と言い、日傘はそれに頷く。




するとジンさんは古い家の前で歩みを止めた。ガラスがいくらか割れており、庭も手入れがされてなくて草が生え放題だ。おそらく誰も住んでいないのだろう。



「ここだよ。」

「なにがですか?ていうか今日これ言うの何回目ですか...」

「実は依頼を受けててね。悪霊退治だよ。本当はいつも千里ちゃんにやってもらうんだけど、今日は一茶くんに私の力を見てもらおうと思ってね。」

「?!」



え?まさか?ジンさんは千里さんみたいな能力的なのを使えるのか?てっきりただ勘が鋭くて霊が見えるだけのおっさんかと思ってた。



ジンさんは扉を開けて家の中へと入っていく。電気はもう通って無いみたいで付かなくて、太陽の光だけの薄暗い廊下をスタスタと歩き、8畳ほどの和室の部屋にたどり着く。



その部屋の全ての窓は木の板でとめてあり、太陽の光がほとんど入ってないため、ほぼ真っ暗だった。壁一面には札がたくさん貼ってある。



「さあ、来るよ。」



ジンさんの声を聞いた瞬間、一気に寒気がした。僕でもジンさんでも日傘でもない吐息のような音が聞こえる。


暗闇に慣れた僕の目が目の前にいる化け物を写す。


そこにいたのは太い手足を持ち、2メートル近い身体のバランスがおかしい巨体の


まるで子供が黒い人間を書いたかのような


まるで見てはいけないものを見ているような



グチャグチャの黒い幽霊がそこに明らかにいた。




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