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試行


家にて日傘の共鳴を試してみたけど、結果的にいうと出来なかった。


幽霊なら誰でも出来るって聞いたから日傘も出来るってことでいい案だと思ったんだがどうやらそんなに簡単にはいかないようだ。


もし出来たとしても完璧に上手くいくとは限らないのだけれど。



「ああああああああ!!!!...どう?」

「うるさい。」

「いや、そうじゃないし。感情伝わったか!?」

「いや、ぜんぜん。」



と、今もこうして練習を繰り返しているのだが全く変化がない。今は深夜の1時で叫び声をあげればすごく近所迷惑なのだが幽霊の声は霊視出来ない人は聞こえないので「うるさい」とクレームを上げる人はいない。


僕以外だが。



「ちなみにどんな感情だったんだ?」

「お腹すいたぁ〜の感情。」

「どんな感情だよそれ。」



まぁこれが伝わるならば共鳴での会話が可能と証明されるので、七重さんの問題がだいぶ解決に近くなるのだが全く空腹感が伝わらない。

いや、今の日傘の顔を見れば空腹なのはわかるけどあくまで理解できるだけだ。これでは共鳴とはいえない。



七重さんの時は身体の内側というか、まるで病気のような感じで心臓辺りから何かが膨れ上がるような感じだった。日傘曰く、悲しみの感情だ。



「明日もジンさんの所を訪ねてみるか。」

「えー、私あいつきらーい。あいつんとこいると何故か私の存在が限りなく薄い気がするんだよね〜。」



それは作者の力不足だからだ。と頭に浮かんだが、はて、何のことだろう?気のせいか?



「それにあいつと話すとなんかやばい感じがするんだよね。直感で。」

「だいぶ失礼な事言うな。まぁ黙っててもいいから行くぞ。」



僕と日傘はあまり距離を置くことが出来ない。それは僕に日傘が取り憑いているからなのだろう。一度どのくらいまで離れられるのかと思い、試してみたところせいぜい15mといったところか。そのくらい距離をとれば視界に映っていた日傘が一瞬にして消え、僕の後ろに現れた。



あの時の驚きはなかなか忘れられない。僕は相当アホな顔をしていたのだろうか、日傘は笑い転げていた。



いつからだろうか。僕と日傘があんな風に仲良くし始めたのは。初めはさっさと消えてくれと思い、無視を続けていたのにいつの間にか僕の空いた隙間に入りこんだように、僕にとってかけがえのない存在となっている。



でも別れは近い内にあるだろう。ジンさんと出会ってからこいつがここにいてはならない存在だと気づき始めてる僕がいる。


そして少しずつ少しずつ問題の解決に近づいているのを感じる。


やるからには後悔なんてしたくない。今こいつはお腹すいたーとアホな顔しているが、こんな心地よい生活は今だけなのだ。



「そろそろ寝るか。」

「えっ!?!?ご飯は?!?!」

「勝手に憑いてていいからカップ麺食ってなさい。」

「えーわかった〜。」



僕は目から少しだけ滲み出た汗を日傘に見せないように布団に入り込む。


うわっ、なんだこれ。全然止まんねぇ。何度拭ってもところてん方式のように溢れ出てくる。本当にところてん方式かはよくわからないが、こんなの小学生以来だ。



大人になってからの悲し涙は少しばかりはずかしい。


僕は今日のお別れの言葉を言った。



「おやすみ。」



日傘は驚いたようで少し間を置いた。でもすぐに


「うん、おやすみ。」


いつもはあまり聞かない、優しい声で返してくれた。





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