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猫と約束  作者: 窪井 柚希
7/13

相談、推測

「・・・なんですって?」

急用で一緒に帰れなくなったという栞をおいて、僕と根黒は下校していた。いつもの土手をふたりで歩く。

「だから、こんなメモが僕の下駄箱に入っててさ。」

僕は今朝の話を根黒にしていた

「・・・『松井栞に近づくな』。ですか。」

「ああ。栞のやつ、ストーカーでもいるのかな。」

「その線もありますが・・・。」

「他にどの線があるんだよ。」

「・・・先輩。先輩も薄々気付いるんじゃないんですか?」

根黒は大きな瞳でこちらを見上げる。

「・・・何にだよ。」

「先輩が・・・栞先輩が・・・。」

根黒は難しそうな顔をして口を開く。僕にはその時なぜだか、根黒の次の言葉がわかった。それを言って欲しくないと、僕は心のどこかで思っていた。

見当もつかなかったはずなのに

「先輩が・・・。」




「栞先輩が、いじめられてるかも・・・ということです。」




「・・・。」

僕は何も言うことが出来なかった。否定することも、肯定することも。

だってあんなにも明るくて、元気いっぱいで、僕なんかとは正反対で、いつでも輪の中心にいた栞が、まさか・・・。でも今日の、というかこの街に戻ってきて、栞に再会してから栞はあの頃の栞とは、少し違っているような気がしていた。

根黒は大きな黒い瞳で僕をまっすぐに見据えていた。その視線はなにか懐かしいものを感じた。

「・・・そういう所はホント、昔から少しも変わってないですね。」

「は?」

「いえ、こちらの話です。」

根黒は、はぁとため息をつくと、

「まぁまた明日話し合うことにしましょう。私の家はこっちですので。」

根黒は今まで歩いてきた道を指差す。

「そっちは今来た道だろ。」

「そうですよ?私の家は、あの橋のほうです。」

そういえばこのあたりは初めて根黒とあった場所だ。このあたりに住んでいたのか。

「なのに何でわざわざここまで来たわけ?」

「ええ。優しい優しい桜子ちゃんはヘタレでダメダメな陽斗先輩のお悩み相談室を開いてあげたんですよ。感謝してくださいね。」

「何だよお悩み相談室って・・・。」

「あ、お礼なら学校の近くのケーキ屋さんのクッキーにしてください。好きなんです。」

「やらねーよ!!」

根黒は満足そうに笑うと来た道を戻っていった。


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