登校、同行
「おはようございます。先輩」
「おはよ。もう遅いよ、陽斗」
「・・・おはよう」
あれから一週間がたった。あの日から、僕らは三人で登下校するようになった。僕が真ん中だ。
両手に花。というやつだろうか。まぁひまわりとドクダミって感じだけれど。
「相変わらず暗い顔してますねぇ先輩。美少女二人に挟まれてるんですから、もっと本心さらけ出してニヤニヤしていいんですよ?」
「自分で美少女っていうなよ・・・」
根黒も相変わらずである。そんな感じで他愛もない話をしながら歩く。土手を抜けて、大通り。同じ学校の生徒がちらほら見え始めてくる。
「あ・・・今日もちょーっと用事あるの思い出した!あたし早めに行くね!それじゃあまた帰りね!」
と言うが早いか、栞は駆け出した。
「おう」
「はい、先輩」
栞はいつも、このあたりで先に行ってしまう。
「・・・先輩。おかしいと思いませんか?」
「何が?」
「何がって、栞先輩ですよ。いつもこのあたりで用事思い出したーって先に行っちゃうじゃないですか」
「たまたまここで用事を思い出したんだろ」
「なんでここなんですか」それに、と根黒「急ぐ用事なら、待ち合わせをもっと早くすればいいのに」
「・・・気を使ってんじゃないの?というか、本人に聞かなきゃ、わかんないことだろ」
「そうですね・・・」根黒は少し寂しそうな顔をする
「とりあえず、急ごうぜ。遅れそうだ」
「誰のせいだと思ってるんですか・・・」
「栞、お前の毎朝の用事ってなんなの?」
「・・・え?」
授業後の校門。委員会で遅れるという根黒を待っている間に、栞に尋ねてみた。
「あぁ・・・。えっとね、あたしが毎朝、クラスの仕事してるから・・・」
「それってクラス委員の仕事じゃないのか?栞ってクラス委員じゃないだろ?環境整備委員でもないし」
「えっと、友達がクラス委員なの。それを手伝ってるんだ」
「・・・ふぅん」それならまぁ、わからなくもないな。
「えらいでしょ」
と胸を張る栞。これに関しては適当に流す。
「でも・・・そっか。ごめんね。一緒に行こうっていいだしたのは、あたしなのに。あたしが二人を置いてってちゃあおかしいよね」
「いや、別にいいよ。根黒が気になってたみたいだから、聞いただけだから」
「・・・そう」
栞は少し悲しそうな顔をした。
そのあと根黒がやってきた。そのときちょうど栞が忘れ物を取りに行っていたので、さっきの話を根黒に話しておいた。根黒は「そうですか・・・」と言ったきり、ずっとなにかを考えているようだった。