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炎のクリハ懲悪所  作者: 海野いか
一 炎の拳とミヨ
8/22

ミヨ、到着

 家の前に黒いワンボックスが止まった。あの車が何をしに来たのか、クリハには容易に想像できた。

 あの車は、ロボットの「ミヨ」を持ってきたのだ。そしてクリハがミヨの実験台を務めることになっている。

「おーいクリハー」

 クリハを呼ぶ父の声だ。クリハは一度深呼吸をしてから部屋を出た。

「おうクリハ!コイツがお前の制御役になるロボット、ミヨだ」

 ミヨの姿は、クリハが想像していたものとは違った。ミヨはよくみるロボットとは違い、まるで本物の女性のようだった。これが人間だと言われたら信じるくらいにだ。しかも、見た目はクリハと同じくらいの年齢のようでかなりかわいい。

「見た目は、こんなに可愛いけど、力はお前より全然強いから。あと、人工知能搭載だから怒らせたらお前死ぬよ」

 息子に対してサラッっと厳しい事を言う。

「人工知能の部分がまだ完全ではないけど、大丈夫だとおもう」

「いやいや、思うじゃ困るんだよ!俺死ぬんじゃねーの?」

「大丈夫っしょ」

「軽い!」

 クリハは珍しく慌てていた。

「まあ、とりあえず、お前の部屋で話してこいよ」

 そういうと背中にあるスイッチらしきものを押した。

『クリハさん、よろしくお願いします!』

 ロボットによくある棒読みではなく、完全に人間の声であった。そして、声までかわいい。

「お、おう」

「緊張するなよ~」

 父親はニヤニヤしている。

「うるせーな」

 そういうとクリハはミヨと一緒に自分の部屋に向かった。


「えーと、ミヨさん?」

『ミヨでいいですよ!」

「ミヨ……ね」

『無理して話さなくてもいいんですよ!』

「これもう人工知能完璧だろ」

『いえいえ、まだまだです』

「謙遜までするのか」

『いえいえ』

「……」

『……しりとり、します?』

 会話が無くなった時の対応法まで心得ている。

「いや、いいよ」

『そうですか』

 少し悲しそうにミヨは言った。

「あ、そうだ!俺には特技があるんだよね」

 ミヨなら見せてもいいとクリハは思った。

『そうなんですか!?』

「見せてやるよ」

『それは、暴力系のものですか?』

「え、そうだけど」

『では、私の耐久実験も兼ねて、私にその技をやってください』

「なんか抵抗あるなあ」

『いいんですよ!』

 クリハは小さく息を吐いた。そして炎の拳をミヨに食らわせた。しかし、ミヨは怯むことなく話した。

『え、今のは……火?』

「ああ」

『す、すごいじゃないですか!』

「ほ、ホント?」

『はい!こんなことが出来るのはあなただけでしょう!』

「まあ、そうだけど」

 それからミヨとクリハは夜まで話した。

『そうで……』

 そう言いかけるとミヨは突然倒れた。

「ど、どうした!」

 どうやら夜十時になるとミヨの電源は自動的に切れ、朝六時になると自動的に入るシステムになっているらしい。

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