ミヨ、到着
家の前に黒いワンボックスが止まった。あの車が何をしに来たのか、クリハには容易に想像できた。
あの車は、ロボットの「ミヨ」を持ってきたのだ。そしてクリハがミヨの実験台を務めることになっている。
「おーいクリハー」
クリハを呼ぶ父の声だ。クリハは一度深呼吸をしてから部屋を出た。
「おうクリハ!コイツがお前の制御役になるロボット、ミヨだ」
ミヨの姿は、クリハが想像していたものとは違った。ミヨはよくみるロボットとは違い、まるで本物の女性のようだった。これが人間だと言われたら信じるくらいにだ。しかも、見た目はクリハと同じくらいの年齢のようでかなりかわいい。
「見た目は、こんなに可愛いけど、力はお前より全然強いから。あと、人工知能搭載だから怒らせたらお前死ぬよ」
息子に対してサラッっと厳しい事を言う。
「人工知能の部分がまだ完全ではないけど、大丈夫だとおもう」
「いやいや、思うじゃ困るんだよ!俺死ぬんじゃねーの?」
「大丈夫っしょ」
「軽い!」
クリハは珍しく慌てていた。
「まあ、とりあえず、お前の部屋で話してこいよ」
そういうと背中にあるスイッチらしきものを押した。
『クリハさん、よろしくお願いします!』
ロボットによくある棒読みではなく、完全に人間の声であった。そして、声までかわいい。
「お、おう」
「緊張するなよ~」
父親はニヤニヤしている。
「うるせーな」
そういうとクリハはミヨと一緒に自分の部屋に向かった。
「えーと、ミヨさん?」
『ミヨでいいですよ!」
「ミヨ……ね」
『無理して話さなくてもいいんですよ!』
「これもう人工知能完璧だろ」
『いえいえ、まだまだです』
「謙遜までするのか」
『いえいえ』
「……」
『……しりとり、します?』
会話が無くなった時の対応法まで心得ている。
「いや、いいよ」
『そうですか』
少し悲しそうにミヨは言った。
「あ、そうだ!俺には特技があるんだよね」
ミヨなら見せてもいいとクリハは思った。
『そうなんですか!?』
「見せてやるよ」
『それは、暴力系のものですか?』
「え、そうだけど」
『では、私の耐久実験も兼ねて、私にその技をやってください』
「なんか抵抗あるなあ」
『いいんですよ!』
クリハは小さく息を吐いた。そして炎の拳をミヨに食らわせた。しかし、ミヨは怯むことなく話した。
『え、今のは……火?』
「ああ」
『す、すごいじゃないですか!』
「ほ、ホント?」
『はい!こんなことが出来るのはあなただけでしょう!』
「まあ、そうだけど」
それからミヨとクリハは夜まで話した。
『そうで……』
そう言いかけるとミヨは突然倒れた。
「ど、どうした!」
どうやら夜十時になるとミヨの電源は自動的に切れ、朝六時になると自動的に入るシステムになっているらしい。




