我慢
このパンチは大切な時に使おう。そして、このことは家族には秘密にしておこう。怒られるから。クリハはそう決めた。
警察から学校には連絡はいかなかったため、クリハは明日からも今まで通り学校に通うことが出来る。父はミヨというロボットをほとんど完成まで導いたため、二週間ほど休みがもらえたらしい。また、盗み聞いた話によると三日後にミヨが自宅に到着しクリハが実験台になる。
「行ってきます」
返事を待たずにクリハは軽くステップを踏んで家を出た。クリハは、昨日、自分に不思議な能力があることに気付き、朝から機嫌がいい。
いつもより家を早く出ているが、学校へ走って向かった。
教室入り口の横開きのドアを開けた。教室には女子が二人いた。クリハが現れた瞬間、二人の笑顔が消えた。凄い嫌われようだな。とクリハは心のなかで思った。
クリハの場合、教科書の類はすべて学校に置きっぱなしでカバンはあくまで飾りのようなものである。
クリハは椅子に腰掛けた。そして顔を伏せた。誰にも見えないように笑顔になった。ついあの炎の拳を振るいたくなる。しかし、今は我慢だ。と自分に言い聞かせる。
授業中も顔を伏せたままだった。クリハは、昨夜の興奮で睡眠不足になっていた。それでも先生はクリハを注意することはなかった。
帰り道も走って帰った。同じクラスの生徒に「なんであの人あんなにテンション高いの?」とヒソヒソ話をされるほどテンションが高かった。
家に帰るとすぐに自分の部屋に向い、熊のぬいぐるみを相手に炎の拳の練習をした。他に誰も出来ないであろう技が出来るのが嬉しくて仕方がなかった。
「これ、もうすぐ破れそうだな」
クリハは熊のぬいぐるみの頬をつねった。
「新しいの買ってくるか」
クリハは制服のまま、おもちゃ屋に向かった。




