屈強な男
翌日から仕事としての勧善懲悪が始まった。しかし、今のところクリハらに仕事が舞い込んでいない。
『依頼人、来ませんね』
「まあ、出来たてだしな」
『一応宣伝はしてきたんですけど』
「依頼が来ないっていうことはいいことだろ」
『そうですけど、仕事したいじゃないですか』
プルルルルル……
『はい!炎のクリハ懲悪所です!はい!はい!はい!わかりました!すぐに駆けつけます!』
ガチャリ。
『クリハさん!初仕事ですよ!』
「おう」
二人は事務所から駆け出した。
『ここらしいです!』
「あ!あそこだ!」
『本当ですね!行きましょう!』
二人の目には屈強な男がひ弱そうな男を殴っているのが見えた。
『強そうですけど……行きますか?』
「当たり前だ!俺の炎の拳で成敗してやる」
『行きますか!』
「いや!俺だけで行く!」
『あ!』
クリハは男のもとへ走った。
「お前ら!やめろ」
「あん?なんだお前」
男がクリハを睨みつけた。クリハは一瞬怯んだ。
「喧嘩はやめろ!」
男のみぞおちに拳をいれた。しかし、男にはきいていないようだ。
「なんだお前うぜえんだよ」
男の拳が顔に入った。クリハはのけぞった。今まで受けてきたパンチの何倍も強かった。
それでもクリハは屈しなかった。もう一発拳を腹に入れたが男の腹はとても硬かった。
「クソッ……」
クリハは炎の拳を使うことに決めた。
「効かねえなぁ……」
「これを食らってからほざけ!」
クリハは炎の拳で男の頬を狙った。
「なっ!炎!?」
パンチが右頬に入った。確かに男の右頬には焦げ目がついていた。
「なんだ?今のがお前の中の最高のパンチか?」
一切きいていなかったようだ。
「……」




