仕事
「ただいま」
本日三度目の帰宅。またミヨが駆けつけた。
『クリハさん!もう完璧です!明日からもう仕事として出来ますよ!』
「こんな速さで出来るの?」
『ちょっといろいろしました……』
「ああ、そうか。とりあえずありがとう」
そのいろいろの中身は怖くて聞くことが出来なかった。
『いえいえ』
ミヨは照れた笑みを浮かべた。つられてクリハも微笑んだ。
「これ、お礼」
クリハは紙袋から推理小説を取り出した。
『あ!ありがとうございます!』
ミヨは本を手に取り笑顔で跳ね上がった。
「そんなに喜んでくれると俺も嬉しい」
クリハは下を向き鼻をこすりながら言った。
『では、今から仕事場に行きますか!』
「おう」
『お母様!行ってきます!』
「はーい」
太陽は沈み、外はすっかり暗くなっていた。ミヨは駅の方向とは逆に進んでいる。
「近くにあんの?」
『はい。徒歩三十分くらいです!』
「別に電話受けるだけなんだし家でも良かったんじゃ……」
『いえいえ、急に駆け込めるようにするためにも必要ですよ』
「そうか……」
歩いているとミヨとクリハがブランコを漕いだ公園を見つけた。
「ここでブランコ漕いだなあ」
『またいつか一緒に乗りたいですね』
「そうだな」
そこから仕事場まではかなり近かった。
『ここです!』
ミヨが指をさした建物は三階建てで、一階には不動産、二階に歯医者、そして三階の窓に<警備会社:炎のクリハ懲悪所>そして電話番号が書かれていた。その窓に書かれた文字を見てクリハは改めて会社名が野暮ったいと感じた。
クリハはひとつ疑問に思った。
「これとかも全部俺が居ない6時間で終わらせたのか?」
『はい!』
ミヨは笑顔でこたえた。
「すげえなぁ」
『ロボットたるもの当然です!』
「もう入っていいの?」
『はい!行きましょう』
ミヨは足を速めた。クリハもそれについていった。




