授業中
「あーもう面倒くさっ!」
駆けつけた男たちは書店の店員で、殴った相手が万引き犯ということでクリハたちはなんとか学校や警察には通報されずにすんだ。しかし、こっぴどく叱られてしまった。
『私が殴ったからですかね……』
「いやいや、そんなことは無いって」
『そうですかね』
「そうだろ」
クリハはすっかり落ち込んでしまったミヨを慰めた。
「正義がこんなふうに怒られるんだよ。この世の中は」
『その通りですね』
帰り道を歩く二人の顔を月明かりが照らしていた。
「いってきます!」
『いってらっしゃーい』
ミヨは書店での出来事を忘れたかのようにいつも通りの元気な声でクリハを見送った。
数学の授業中。五十代の女教師が授業をしている。
「えーと……ここの97ページは宿題で出しましたよね?」
「あ?こんなん出てねえよ」
男子生徒が大きな声で言った。確かに97ページは宿題で出ていない。
「なんだ年取って記憶力無くしちゃったか?」
「うるせえなお前」
クリハが立ち上がり、教師を馬鹿にした発言をした男子生徒のもとへ歩み寄った。
「い、いや冗談だし?」
笑っていた男子生徒の顔が引きつった。
「そういう問題じゃねえよな」
クリハが男子生徒の頬を殴った。男子生徒はそのまま椅子から落ちた。
「痛えなオイ」
男子生徒が立ち上がった。男子生徒もクリハの顔を殴った。
「お前のは痛くねえな」
クリハはまた男子生徒の顔を殴った。すると男子生徒も耐え、クリハを殴り返す。
「ちょ、ちょっとやめてください」
教師が止めに入ろうとしたが、危ないからと他の生徒が止めた。
「せ、先生!私が松崎先生呼んで来ますから!」
松崎先生は腕っ節のいい体育教師。教師陣の中で一番力が強く、足が速いということから、生徒同士が喧嘩をした時には必ず止めに入るという役割になっている。
「あ、ああ、お願いします!」
「そろそろ全力で殴っていいか?」
クリハが挑発の意味も込めて言った。
「おう、来いよ」
男子生徒は痛みを我慢して笑った。その時、クリハの拳から炎が出た。男子生徒は殴られた勢いのまま後ろに倒れこんだ。
「え?え?今の何?」
「アイツ、超能力者なの?」
「ちょっと怖いんだけど」
クリハの炎の拳を初めて見た周りの生徒達は騒ぎ始めた。
その時、松崎先生が到着した。
「おい!お前らこっち来いや」




