常習犯
「ねえ君」
クリハはパーカーのフードを掴んで脱がした。
「あ!おめえあの時の!!」
本を万引きしたのはあのときスーパーで万引きをした金髪の男だった。
ミヨはこの男が誰なのか知らない。ミヨが不思議そうな表情をした。
「あ、後で説明する。とにかくコイツを成敗だ」
クリハは男の袖から文庫本を取り出した。そして、その本を握りしめて言った。
「お前二回目だよな……?」
「す!すいません!」
「ちょっとこっち来いや」
クリハは男のパーカーのフードを引っ張り、本屋の裏に連れて行った。
「いや!本当に!」
男は必死で謝った。
「いや常習犯とか許されんでしょ。しかもなんだこの本、女にモテるためのテクニックって」
「ごめんなさい!」
「許さないよ!やるぞミヨ」
『はい!』
「お前こんな彼女が……」
「うるせえ!」
クリハは男の顔面を右手で殴った。
「ごめんなさいって」
「反省の色が感じられない」
もう一度顔面を殴った。
『悪い事をしてはいけませんよ!』
ミヨの拳から風を切る音が聞こえた。
「この美女……あいつより強い……」
「おいおいマジかミヨ」
ミヨがもう一発顔を殴った。
「くっ……」
男が地面に倒れこんだ。
「み、ミヨ……もういい」
『あら、そうですか』
ミヨは腕を止めた。
「俺の番だな」
クリハは腕を鳴らした。
「おらっ」
すでに倒れている男にも容赦なく拳を振るった。
「うっ、ごめんなさいっ……」
男は必死に謝り続けた。それでもクリハは男を強く握った拳で殴り続ける。
「前回のことで懲りてないんだからそれ以上の痛みを与えるのは当たり前だよなぁ?」
「すみません……」
男は悲痛な表情を浮かべた。それでもクリハは殴る。
『あの拳を使わないんですか?』
クリハはこの男を懲らしめることに集中しており、今まで忘れていた。
「使うか!」
そう叫ぶとクリハは男の赤く腫れた顔面を目掛けて全力で殴った。その拳から炎が上がった。
「なんだこれ……熱い!」
男の頬に焦げ目がついた。
その時、
「おい!何をしている!」
既視感。クリハが振り向くと警官の格好をしていない、普通の男二人が駆けつけていた。




