第三節
最近、高橋君との関係についてよく聞かれます。男の子の場合は、
「ねーねー、菊池さんって高橋と付き合ってるってホント?」
「まじかよ、あの高橋が彼女か~」
と、高橋君に彼女が出来たことを驚かれます。逆に女の子に聞かれると、
「……菊池さんって高橋君と付き合ってるの……?」
「……」
少し怖いです。
高橋君と付き合い始めてから、仲の良いお友達とそうでない人達の差が広がった気がすると言いますか、敵意のような視線を感じるようになりました。
「そんなのタダの嫉妬だよ嫉妬。お菊が気にする必要ないって」
それでも、由美ちゃんみたいに今まで通り接してくれる友達もいます。
放課後、近くのファミレスに寄って由美ちゃんに相談にのってもらっています。
「うん……でも、もし私が逆の立場だったらって考えちゃうと……」
「じゃあさ、お菊はその子達に高橋が取られてもいいって言うの?」
「それはダメ!」
私は思わず大きな声を出してしまいました。
「んじゃあやっぱり気にしないで高橋とイチャコラするしかないって」
イチャコラって、由美ちゃんはちょっとエッチです。
「そーんな弱気だと、私が高橋とっちゃうよ~?」
え……?
「にゃはは、ジョーダンだよジョーダン」
由美ちゃんはいたずらっぽく笑います。
「も、もしかして、由美ちゃんも高橋君のこと……」
「ちょ~っと! やめてやめて! ホントに冗談だから! 私はこんなことで友達失いたくないよ!」
由美ちゃんは慌てた様子で両手を振りました。
「良かった……もしそうだったら、私、由美ちゃんにすごく嫌なことしてると思っちゃって……」
「お菊は心配症だな~。まぁそこが可愛いんだけど」
由美ちゃんは私の頬を軽くつまんで引っ張ります。
「おお! 伸びる!」
「ゆいひゃん」
「あははは!」
由美ちゃんは笑顔を満開にして笑っています。きっと、由美ちゃんのこういう無邪気なところが男の子に好かれているのだと思います。
「私はな~、彼氏って言うか……うーん…………別に隠してたわけじゃないんだけど、私さ、許嫁がいるんだよね」
それは初耳です! そしてロマンチックです!
「これがまたクソ真面目を絵に描いたようなやつでさ。こんどお菊にも紹介するよ」
ものすごく楽しみです!
「そうだ! じゃあ今度ダブルデートしよっか! どうせお菊と高橋はまだ二人で遊びに行ったりとかしことないんでしょ?」
う……それはその……まぁその通りですが……まだ私達は付き合ってから日が浅いですし……。
「じゃあ決まりね。今度の日曜日、駅前に集合! ちゃんと高橋に連絡しとくんだよ~」
由美ちゃんはニヤニヤした顔で、電話をかけるジェスチャーをしました。
かくして、私達は四人で遊びに行くことになりました。