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残念だけど、神は万能じゃないのよね



「さぁ、一体どういう事なんです? 俺の力…記憶を視る事しか出来ないじゃないですか 」


愛美の件から3日程経った頃、俺はついぞ痺れを切らして創造主の元へと直談判をしに来ていた。

あの日から何度かニコに付いて仕事を回ってみたけれど、俺にはどうやら転生させる為の能力…(【魂送り】と言うらしいのだが)が与えられていないらしい。

結局俺はあれから他人の記憶を覗き見るだけの悪趣味な役割をこなしている。正直最悪な気分でいた。


「どういう事ってどういう事かなぁ? 」


惚けた顔で椅子に腰掛けている創造主を睨みつける。

解っているくせに意地が悪い、神様って奴は皆こういう性格なんだろうか?


「すっとぼけなくて良いですよ、何で俺に魂送りの力が与えられてないんですか? って事ですよ。このままじゃ俺、お荷物でしかないんですけど」


最早何も役立たないままでニコの後をついて回るのは気がひけていた。

本当は今日も一緒に…と誘われていたのだが断って此処にいるのだ、このまま手ぶらで大人しく引き下がるわけにはいかない。


「いやいやちょっと待ってよー、必要な力は与えたって言ったじゃん。もう十分仕事はこなせるハズだと思うけど? 」



理解出来ないとばかりに首を傾げる創造主に腹が立つ。

記憶を覗くだけの能力が必要な力だと言うのだろうか?


「そうだよ」


一瞬ギョッとした。


「そう、その記憶を覗くだけの能力が必要な力なんだよ、君には、ね」



創造主が意地悪く笑う。

俺の心の中でも読んだのだろう、仮にも神ならきっと造作もない事だ。但しお世辞にも性格は良くないと思う。


「性格良くなくて悪かったねぇ、でも嘘は言ってないよ。君に与えた能力は記憶を覗く力だ」


「俺にそんな力でどうしろって言うんです」


不貞腐れながら尋ねれば、創造主はニヤついた顔を返す。


「それならもう君は自分の役目を全うしていた気がするけどなぁ? 」


「…どういう事ですか」


いまいち理解出来ない創造主の言葉の意味を模索する。


全うした? 俺が?

いつ? 何処で?


俺がした事と言えば、無駄に首を突っ込んでいただけな気がするのだが…。


「要は君にはさ、あどばいざーになってもらいたいんだよね」


「アドバイザー? 」


「そう、後悔無き転生ライフを味わってもらう為に、亡者達の深層心理から本当になりたいモノを導いてやってほしいんだよ」


そこまで言って、創造主は俺に背を向ける。

そして長い長い溜息をついた。


「昨今、生を全う出来ないヤツが多すぎるんだよ。こちらとしても予定外の死ばかりでね、対応に追われる事もしばしばだったんだ」


創造主は言葉を続ける。


「特に人間ね、やれ人生に絶望しただ、世界に失望しただで簡単に死を選ぶ。気付いた中には手を差し伸べてやってはいたけど、中々に多くて手が回りきらなかったんだ」


「…神なのに? 」


俺が不審げに尋ねると創造主は苦笑交じりに顔を歪める。


「残念だけど、神は万能じゃないのよね」


考えていた事を当てられて気恥ずかしくなった。

そうだ、神様が万能なんて所詮人が考えた想像でしかない事だ。


「まぁ、そう言ったわけでねぇ。人手は探していたのよ」


再びニヤついた笑みを向けられて俺は戸惑う。腑に落ちない点はあった。


「なら何故ニコ達にその力を与えないんです? 」


当然の質問だった。

俺にその力を与えずとも、最初からニコ達にその力を持たせておけば済む話ではないのだろうか?


「まぁそうだね、最もな意見だ。だけど何て言うのかな、私達とじゃやっぱり住む世界が違うからかねぇ、人間の心をなかなかに理解しづらいんだ」


結果、力を与えるに適さないのだと言う。

そんな中に現れたのがイレギュラーな俺の存在。

まさか自分達の仕事を手伝うなんて言い出す人間が居るとは思わなかったのだそうだ。


「さぁて、話は理解してもらえたかなぁ? ちゃんと最初に説明しなかったのは悪かったね、ニコに任せっきりにしたのも悪かったと思うよ」


頭を掻きながらそれ程悪びれた様子もなく謝罪する創造主に対して俺はあからさまに溜息をついた。

もういい、これ以上は深く追及しても効果ないだろう。

それに大体にして知りたかった事は知れたのだし問題はない、これで今後の身の振り方も分かった。


「分かりました。何かまだ引っかかる部分がありますけど、一先ずは納得しておきます。神様には逆らえませんし」


「うんうん、そうしてもらえると助かるねぇ」


満足気に頷く創造主に俺は背を向けると、そのまま部屋を後にした。

やっぱりこの神は食えない相手だという事を実感しながら。



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