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本当にそれはなりたいモノなのか?



「そういう訳なので、古澤様には希望の転生条件を教えていただきたいのです」


すっかり落ち着いた愛美の側でニコがそう説明をしている。

流石にここから先は俺には役不足だ。

俺は傍目から2人の様子を窺っていた。


「どんなモノでも構いませんよ、出来る限りのご要望にお応えしますので」


愛美が首を傾げて考え込む。

うんうんと眉をひそめては唸っていた。


「あのね、なりたいモノはいっぱいあるの。お姫様でしょ? プリピュアのピュアピーチでしょ? ケーキ屋さんでしょ? あとあと、お花屋さんにもなりたい! 」


目を輝かせて訴えかけてくる。

先程まで泣いていたとは思えないぐらいの変わり身の早さだ 。


「ええっと…流石に全てのご要望をお聞きする事は出来ないです…どれか一つに絞っていただかないと」


そう言うニコの表情は赤ら様に困っているようだった。



「なぁ、愛美。なりたいモノって本当にそれでいいの? 」


つい、口を挟んでしまう。

これは本人の問題だ、正直言って俺が口を出すのは間違っているのだろう。

しかし本当の意味でも一生を決める大事な事だけに、後悔をさせるような人生を選ばさせたくはなかった。


「どうして? 私どれも好きだよ? 」


少し不満気に愛美が首を傾げる。

しかし俺は構わず話を続けた。


「いいのか? 生まれ変わるって事は今の愛美は居なくなっちゃうんだぞ? 今の愛美を消してまでも本当にそれはなりたいモノなのか? 」


今一度問いかける。

余計なお世話だと言われてしまえばそれまでの俺の言葉を愛美はどう感じるのだろうか?

目をジッと見つめて答えを待っていると、愛美がボソリと呟いた。


「…それなら私、うさぎになりたい」


「へ? 」


一瞬、聞き間違いかと思って変な声が出てしまった。

だってそうでなけりゃ、今俺の耳に聞こえたのは予想以上に突飛な答えだった気がする。


うさぎ? 今、うさぎって言ったよな?

うさぎ目うさぎ科うさぎ亜科のうさぎで間違いないんだよな?

あの一般的に耳が長くて草を食んでるイメージのうさぎで間違いないんだよな?


困惑する頭の中を必死で整理する。

ニコにとっても予想外だったようだ、俺より更に困惑した顔で隣に立っていた。


「ちょっと待て愛美、今本当にうさぎって言ったか? 」


「うん、私うさぎになりたいの」


今度ははっきりと聞こえた。

間違いない、間違いなくうさぎと言っている。


「ダメ…かなぁ…? 」


俺達の態度に不安になったのか、泣き出しそうになる愛美を落ち着けようと頭に手を伸ばした瞬間、手の平に静電気のようなモノが走った。

それと同時に頭の中にフラッシュバックのように記憶が流れ込んでくる。


今よりもう少し幼い顔をした愛美と薄茶色の毛並みをした一匹のうさぎ。


これは俺の記憶じゃない、こんな覚えはない。きっとこれは愛美の記憶だ。

何故だか俺の中に愛美の記憶が流れ込んできた。




『うさマロは愛美の1番のお友達だよ』


記憶の中で愛美がうさぎに語りかけている。

その言葉に応えるように、ヒクヒクと鼻を震わせていたうさぎが愛美の膝の上に飛び乗った。どうやら愛美によく慣れているようだ。


『愛美が幼稚園から居なくなっても、うさマロは愛美を忘れないでくれるかなぁ…』


うさぎの頭を撫でながら愛美が呟く。

悲し気に、愛おし気にうさぎを見つめる愛美の姿に、どれだけ愛美がこのうさぎを大切に思っているかが窺い知れた。


『ねぇ、うさマロ…返事してよ。愛美の事、忘れないって言って? 私、うさマロと離れたくないよ』


しかし優しく抱きしめる愛美の手をすり抜けてうさぎは愛美から離れていく。

後ろ足で地面を蹴っては、まるで威嚇しているような行動をとっていた。



記憶はここまで。

ぐるんぐるんと渦のように頭の中を巡った記憶に酔いそうになりながら、俺はニコを見上げる。


「今のは…? 」


そう尋ねてみたけれど、ニコは不思議そうな顔で俺を見下ろしているだけだった。









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