四話幕間 今年の冬は寒くなるな
クレーヴェン川を挟んで南部都市同盟国家を睨む、ホーホエーベネ最南端砦。
ただただ、厳粛な緊張に包まれているこの砦で、2人の男が会話していた。
「全く、都市同盟の連中め、奴らが軍備を進めると決まってこちらが不作になりおる……奴らの計略か?」
「因果が逆やもしれません、ダンカン卿」
砦内、執政室。テーブルを挟んでグロリアの父、ダンカン・ホーホエーベネ辺境伯と、側近であるリヒャルト・ワーグナー伯爵が語り合う
「逆?」
「我らが厳しいなら、奴らも厳しい。ならばこそと考えても不思議ではありません」
「全く……野蛮人どもめ……」
「我等が優秀なら、敵も優秀なものです。でなければ冬も近づくこんな時期にこうして男どもをこんな砦に押し込めんでしょう」
昼食の燻製や蜂蜜酒にも手が伸びない
「……作物の不作、都市同盟共の動き、グロリアの結婚……全く、神経が持たんわ」
「まだわがまま言っているのですか。」
「……本当は自由にさせてやりたいが……ホーホエーベネ領の事を考えると、政略結婚の道具にするしかない。貴族の因果だな……」
苦々しげな顔を見せる。
「その苦労、わかります。」
その時、けたたましくドアが開けられる
「だ…だ…ダンカン閣下!大変です!」
「どうした!都市同盟が動いたか!」
「……アイゼンボルグ家、ハインリヒ閣下が……本邸に……視察に……」
それを聞くやいなやダンカンは口をあんぐり開け顔が青くなる。
「……すぐに行く!馬を用意しろ!リヒャルト!後は頼んだぞ!」
バタバタと出ていくダンカンにあっけに取られるリヒャルト伯爵。
ふと、窓を見る。
クレーヴェン川。歩兵の進軍を阻む天然の壕。
この川が凍れば、国の堰が一つなくなる。
「……今年の冬は……寒くなるな」




