二十二話幕間 境界線の味、あるいは異国の知恵。
危険が去ったと分かるとドッと疲れが出た。
背もたれにもたれかかりながらメニューを見る。
「とりあえず、ここカフェ何だよね。何か頼みましょうか」
そう言ってメニューを眺めるが、見たこともない商品なので何がどういう味なのか分からない。
初めて海外旅行するとこういう気分になるんだろう。
「グロリア様、よろしければ私が頼みましょうか?」
リリアが助け舟を出してくれる
「お願い、リリア。何か─甘いものがいいわ」
頭を使い通しなので、とにかく糖分が欲しい。
「分かりました、任せてください!」
そう言って、店員を呼びつけ何かを頼む。
ハンネスも一緒に頼んだようだ。
何が来るんだろう。
「お待たせいたしました」
そう言って、出された商品は、見た目はコーヒーのようだった。
香りは……何か甘い香り
口をつけて味わおうとすると
「えっ!?なにこれあっま!」
砂糖をそのまま舐めたような甘みが舌を刺激する。
「リリア、これ何?」
「南部で良く飲まれている甘味ですよ。どっちかって言うと、おやつですね」
「樹液を煮詰め、水分を飛ばして甘みを出したものです。子供が風邪を引いたときなど、よく振るわまれます」
リリアとハンネスが説明してくれる。
再び口をつける。
さらりとした水飴のようで、香りは少し香ばしい甘みが混じっていて、よく味わうと美味しい
「ふぅん、確かに子供は好きそうね」
都市同盟にも、人がいて、文化があって──子供がいる
「……何故、都市同盟は戦争を仕掛けてくるのだろう……私は、戦争なんかしたくないのに……」
何気ない私の呟きに、ハンネスが返す
「まず、目下の目的はホーホエーベネの土地です。この一帯の農地は、余りにも魅力的です」
食料。大事だ。
食べ物で戦争が起きるのは普通だ。
「……でも、交易とかで平和的に振る舞えない?わざわざ戦争をするのは……」
「平和が続けば、人が増えます。人が増えれば、仕事が足りなくなります。仕事がなくなれば、人は飢えます。ここまで言えば、グロリア様は、お分かりになるでしょう」
そう、領民のための戦争だ。
住む場所、働く場所。そして、食べ物。一度に解決するための方策、それが……戦争。
よく戦争で泣くのは一般人だ、という一般論。それも、時代によるらしい。
「……難しいね、政治って」
「グロリア様は、よくやっておられます。」
ハンネスの慰めに涙が浮かぶ。
たぶん、真剣に考えなきゃいけないことだけど……今の私のキャパシティを超えている。
いつか、向き合おう。
「……そうだ、リリアは何を頼んだの?ハンネスもおんなじ物みたいだけど」
考えを変えたくて話題を振る。実際見たこともない飲み物は気になる
「あー……飲みますか?私のでよければ」
そう言って、リリアはコップを差し出す。
「ありがとう、リリア。一口いただくわね。」
赤い液体は綺麗で、美味しそうだったが──
一口飲んで後悔した
「かっっっらい!なにこれ!?」
「とうがらし茶です」
「とうがらし茶!?」
「冬の寒い時期はこれで乗り切るのが一番です」
そう言ってリリアはこともなげに飲む。
「……ハンネス、美味しいの?」
「都市同盟の冬の名物ですね。夜の警備などをするもの等は、これが振る舞われます」
そう言ってハンネスも難なく飲む。
──文化って広い。
そう思って手元の飲み物を飲む。
「……私は甘いほうがいいわ」




