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第二十一話 境界線のティータイム

商工会から出てしばらく、ハンネスが周りを気にしているように見える。すると、小声で

「つけられております……恐らく、二人から。片方は慣れており、片方は不慣れに思います。」

ハンネスが時計を見ながら囁く。

「わかるの?」

「はい、ペースを変えず付いてくるものが、二人。なおかつ、いくつか道を曲がりましたが……二人とも同じタイミングで曲がっておりました」

尾行とは、穏やかな話じゃない。

「危険?」

「わかりません……少なくとも、害意あっての尾行ではないようです」

「それも、わかるの?」

「襲撃なら、確実に二人以上必要です。それにしては……」

チラリと路地を見やる

「連携していないように見えます。恐らく、別の勢力同士でしょう」

商工会の者か、それとも私に直接接触したい何者かか……

「撒きますか?」

こういう即判断しないといけない事態は苦手だ。

それに──

リリアを見ると、尾行と聞いて少し不安そうにしている。

「……そうだ。何処かで休憩しましょう……あのカフェでどう?」

一旦時間が欲しい。



オープンテラスのカフェといえば聞こえがいいが、実態は都市開発に置いていかれた空き地に、それでも遊ばせているわけにはいかないから作られた露天のような場所だった。

嗅ぎなれないスパイスやお茶の匂いが立ち込めて、これはこれで風情がある。

盛況というほど人はおらず、かと言って賑わいがない訳でもない。周りに客が座っていないテーブル席に腰を落ち着けた。

ハンネスが鋭い視線を周囲に向けている。

撒くべきだったかもしれないが、それ以上に相手の真意を知りたかった。

「はぁ……一息ついた気がするわ」

「お嬢様、ここ都市同盟側のお店です」

リリアがメニューを見ながら教えてくれる

よくよく店主のような人物や、働いている人を見ると、王国の人と違う印象を受ける。確かにハンネスの顔に近い。

「……領主の私がいうのもあれだけど……いいの?」

「都市同盟と言っても、商人です。王国が商人の出入りについてはある程度の自由を認めている以上、やむないリスクです。逆に、こちらの商人も都市同盟に行っているはずです」

ハンネスのアドバイスは的確だ。

ハインリヒ様の元護衛の肩書は伊達じゃない、少なくとも今の私は彼の力が要る。

ハインリヒ様の影を感じる、守られている。そう思うだけで、何だか気分が軽くなった。

出迎えてやる、とまでは言えないが、心構えはできた、と思う。

間が空いてしまい、私は手持ち無沙汰に、テーブルのコインを指先で転がした。

「お嬢様、またそれですか」

リリアに苦笑いされて、我に返る。

緊張すると指を動かしてしまうのは、前世からの癖だ。

向かいの席で、こちらをチラチラと伺っている商人の男。……彼の左手の薬指には、不自然な日焼けの跡がある。最近まで指輪をしていた、つまり、財産を売ったばかりか。

「さて、鬼が出るか蛇が出るかってやつ、かな。」

「……お嬢様、それどこの言葉ですか?」

流石にこのことわざはこの国には無かったらしい。

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