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第十二話前編 闇の中の戦争──辺境伯夫妻の誓い
「あなた……」
アマリアが、きつくダンカンを抱きしめる。耐えられない。
「あなた……逃げましょう、グロリアを連れて」
ダンカンの顔を見る。戦場に行く前の顔をしていた。
「……アマリア、グロリアは私達の娘だ。信じようじゃないか。」
いつもダンカンにかけていた言葉を返される
「いつの間にか、あの子は貴族として、私より先を見ている。」
一拍、置く。
「だが……あの子はまだ子供だ。」
戦争の気配がする。剣を振りかざす戦争ではない。もっと深い、闇の中で行われる戦争だ。
「私達は、親だ。あの子の支えになれる者だ」
ダンカンがアマリアを抱き寄せる
「……力を貸してくれ、アマリア。共に、グロリアを支えよう」
親であるこの二人ができることは、立ち向かう決意をした子の背中を守ること。
「あなた……」
ゲバルトを見る。こちらに見向きもしない
逃げるわけにはいかない。娘であるグロリアが立ち向かっているのだ。
「……ゲバルト卿」
名前を呼ぶだけで、十分だった。




