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九話幕間 捧げるべきは、この身の全て
考えてみる。自分にとって一番大事なものを。
最初、この地に立ったときは、何が何やらわからなかった。
異世界転生だし、悪役令嬢への転生だし。
チートスキルも何もない。
あるのは、手品だけ。
でも、この手品がなければ、多分、ハインリヒ様とこんなに深く繋がれなかっただろう。
考えてみる、私が一番大事なものを。
ずっとイライラしていた。辺境伯の娘だというのに、結婚相手も自分で選べない。
使命、責任。単なる言葉だけ。
そう信じていた。
ホーホエーベネが燃えていく。
燃えて無くなって──そこには何も無い。愛も憎しみも。
ハインリヒ様は最後まで泣かなかった。強い人だった。
そんな人が、最後には泣いていた。
愚かだった。
誰がと問われれば、私だ。
グロリアホーホエーベネだ。
後世の歴史家は元々リブラ王国が腐っていて、単にいつ引き金を引くかだけという評価でしかないだろう。
違うはずだ。
まだ、間に合うはずだ。
じゃなければ、こんな奇跡、起こるはずがない。
起こしていいはずが無い。
ハインリヒ様。しかめっ面の旦那様。
私の祈りはかわりません、貴方が、笑顔でいられる国を……そのためになら──
全てを捧げてもいい。




