表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/40

第九話 信じるよ、グロリア

目が覚める……夢を見た。気を失っていたらしい。


「ハインリヒ様!」


「……申し訳ありません、俺だけです」


マティアスが窓際に立っていた。何かを警戒しているようだ。


「マティアス様、ハインリヒ様は!?」


「閣下は今、ギュスターヴ閣下の下で動いています。グロリア様、あなたの疑いを晴らすために。」


ハインリヒ様が来ない。


「……そんな……」


声が聞きたい。手を握ってほしい。その体で守ってほしい。


こんなに不安になったのはいつぶりだろうか


少し部屋空気が変わったように思うのは、外の見張りがハンネスに変わったからだろう。

会話は無い。


マティアスはじっと外を警戒しているし、ハンネスは部屋の外だ。


不安がこみ上げてくる。


マティアスの得意の軽口も今はない。


ドアから声が聞こえてくる


『ダンカン辺境伯夫妻です、通しますか?』

マティアスが目線のみで許可してくれる。

「……通してください」


父が入ってきていきなりくれたのは罵声だった


「グロリア!何度も言っただろう!お前の立場の大事さを!」


母が必死に止めているが、聞きもしない。


マティアスも控えているが、多分明らかな暴力を振るわれるまでは何もできないだろう


「ホーホエーベネとアイゼンボルグの家の繋がりの重要性を何度も説いたはずだ!……持っているのなら!証を出すのだ!私の首と共にお前の助命を……」


「……ごめん……なさい」


言葉もない。謝るしかない。

みんなに認められて、有頂天になっていた自分を殴ってやりたい。


「……軽薄な行動を取ってすいませんでした……お父様……でも……何も盗んでいません……それだけは信じて……それだけでいいです……」


そう、グロリア・ホーホエーベネが、家を裏切るような行動をとるはずがない。私はこの地を愛している。


「……グロリア……」


「……お父様の不安はわかります……以前の私を知っているなら、尚更。でも信じてください。私が、ハインリヒ様を信じていることを」


愛しているなんて軽々に言えない。

ただ、ハインリヒ様を信じることしかできない。


「……済まなかった、グロリア……お前を信じきれなかった……また、あの癇癪が出たのだと……」


「お父様……」


「グロリア、顔を見せておくれ」


父が手で顔を挟む

「……大きくなった。アマリアに似た癖毛に、目元は私そっくりだ……グロリア、お前は私達の娘だ」


「お父様……」


「信じるよ、グロリア。そして許してくれ、お前を信じられなかったバカな父親を」


「お父様!」


思わず抱きついてしまった。

この感情は何というのだろう。


……ようやく、本当に親子になれたのかもしれない。

中身は18歳まで育てられたグロリアじゃないけれど。

それでも、今は私がグロリアだ。彼等の娘だ。


両親が去った後の部屋は、温度が下がったかのように寒かった。


実際に気温が下がったわけじゃない。


不安なんだ、どうしょうもなく。


マティアスに話しかければ、無理やりにでも話を合わせてくれるだろう。


そんな事、出来るはずがない。


ドアから声が聞こえてくる


『お通しできません』

『護衛風情で僕に楯突くのかい?』

『私の主君はハインリヒ閣下のみです。』

『僕はそのハインリヒの弟だぞ!』

確か、ハインリヒ様の弟のヨハンネス様。


「通すな、ハンネス」


「通してください、ハンネス様!」


マティアスの声を遮り、ヨハンネスを迎え入れる。

沈黙に耐えられなかった。


「おやおや、随分と情けない顔になったね。まあ、南の田舎貴族、化粧が剥がれればこんなものか」


まさかいきなりこっちを貶して来るとは思わなかった。


マティアスが厳しい目を向ける


とりあえず、来た目的を聞かないと…

「ヨハンネス様、どういった御用で?」


「用?用なら君が盗ったとかいう物を見せてほしくてね」


「……私は、盗んでいません」


同じ親からどうすればこんなに性格が変わるんだろう


「ヨハンネス閣下、余り無礼が過ぎると、どうなっても知りませんよ。」


マティアスが釘を差す


「兄上の取り巻きは黙っててくれないかな?兄上がいなければ何もできないくせに」


私もそうだ、ハインリヒ様がいなければ、こうやって待つしかできない。


「そうだ、手品ってやつ見せてよ、この金貨でいいかい?」


こちらに金貨を投げてよこす。

触ろうとするが、出来ない。


「……出来ないのかい?それとも、僕に見せたくないのかな?」


マティアスが叫ぶ


「もういい!ハンネス!つまみ出せ!」


ドアを開けてハンネスが入って来る


「おい!触るな野蛮人!一人で帰れる!」


流石にハンネスの巨体にビビったのか帰っていくヨハンネス。帰り際にカサンドラ様が話しかけてくれた


「グロリア様、耐えてください。冬はいずれ春になります」


「カサンドラ様」


「グロリア様、いつか、見せてくださいね?手品」


励ましてくれた……自分も、大変なはずなのに


ドアが閉じる音が、やけに大きく聞こえた。

後に残されたのは、踏みらされた静寂だけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ