七話幕間 鉄の騎士の焦燥
「兄上、グロリアの軟禁を解いてください。でなければ、たとえ兄上であろうとも」
ここまで感情的になっているハインリヒを、グロリアは知らないだろう
「落ち着け、今はな。」
ギュスターヴが諌める。
「ギュスターヴ!」
「ハインリヒ!」
ハインリヒの焦りを、一喝で止める。ここは、流石に人生の差だ。
「……申し訳ありません、兄上」
流石に冷静になるハインリヒ。
しかし、拳は握られたままだ。
「私もグロリア嬢を疑ってのことではない、逆だ。今下手にうろつかれると、かえって怪しまれる」
「はい……」
項垂れるハインリヒ。心なしか、体が震えている。
「……ハインリヒ、冷静になれ。まず、お前は何をした?」
「……帰っていく客の引き留め、そして掃除の後のゴミの捜索です」
「……わざわざお前がすることではないな」
そう言い捨てるギュスターヴに、ハインリヒは食ってかかる。
「しかし、兄上、グロリアが!」
今にも飛び出していきそうだ。
「ハインリヒ、探して現れる証拠もある、しかし、下手に探せばかえって見つからなくなる。」
ギュスターヴの目が、どこかを見つめている。世界を見通すかのように。
「……兄上……」
「既にいくつか報告が上がってきている、が、どれもこれも確定的証拠ではない」
「……見つかるのでしょうか」
「見つからんだろう。そういう人だ」
「……兄上は何か見当がついておられるのですか!?」
「まだ、言えん。私も神ではない。」
声に何処か諦観を感じる。その意味は、世界すら見通す目ですら見出せぬ深淵にあるのか。
その瞳は、窓の外─ゲバルトの居室に向けられていた─
「……グロリア……」
体を戦慄かせ、壁を拳で打ち付ける。焦りが体を動かそうとするが、何が正解かわからない。
ハインリヒが、初めて小さく見えた。




