死の値札
そう、歴代の英雄は八人――このギャンブルを始めた最初の帰還者を除けば、たった八人だ。
つまりこの賭けは、「ヒーローが生還する」という一点に限って言えば、ほとんど成立していない。
馬はほぼ確実に死ぬ。
だからヒーロー予想は大穴で、普通は途中経過に金が流れる。生存時間、功績、ランク――あらゆる指標が賭けの対象になる。オッズも様々だ。
この前の“スキル九個持ちの剣聖”には、トータルで六千七百億が投げ込まれていた。久しぶりに「ヒーロー」に賭けた者もいたらしい。もし当たっていれば、そいつは小さな国を買えるくらいの金を、余裕で手にしていただろう。
だが剣聖は死んだ。
四天王と呼ばれた魔王軍の幹部――その中でも最弱の一体と相打ちになって、あっさりと。
定番の台詞は、聞けずじまいだった。
そしてヒーローに賭けた男は、その賭けが生涯最大の勝負だったのだろう。外したあと、破産した。
その結果、剣聖と同じ世界に送り込まれる羽目になった。
男は向こうで「三神」と名を変えた幹部を次々と撃破し、最終的には魔王に討たれて果てた。
知った顔の大健闘に、金持ちたちは腹を抱えて笑った。
スクリーン越しの地獄は、稀に見る大盛り上がりを見せた。
――こいつらは狂っている。
人を見世物にして商売をするなんて、間違っている。
だから、俺はいつかこいつらを潰してやる。
もう二度と、あんな思いはしたくない。




