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第1話 森での目覚め
目を開けると、木々の間から朝の光が差し込んでいた。湿った土の匂い、鳥のさえずり、風に揺れる葉の音――どれも鮮明で、どこか現実とは違う感覚だった。
「ここ……どこだ?」
事故に遭ったことは覚えている。だが目の前の景色は夢のようで、神のような声のことも信じられなかった。
まずは自分の身の回りを確認する。服は無事だが、ポケットも手も空っぽだ。何も持たされていない――完全に手ぶらの状態。心細さはあったが、ここで何とかしなければ生き延びられない。できることを考え、少しずつ行動を始めた。
辺りを見渡すと、茂みの奥で小さく動く影が揺れた。枝の間を飛び跳ねる小動物のようでもあり、葉の陰に何か潜んでいるようにも見える。怖さはあったが、近づいて確かめる勇気はなく、距離を保って眺めるだけにした。
水の流れる音を頼りに森を歩き、安全そうな木陰を寝場所に選ぶ。木の実を拾い、枝や葉で簡単な寝床を作る。まだ何もわからない森だが、とにかく生き延びるための最低限の行動で一日を終えた。
日が傾き、森の色が少しずつ暗くなる。緊張したまま、まだ何が潜んでいるのかわからない森で夜を迎えた――この手探りの一日が、異世界での最初の経験となった。




