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変化

街であのバカバカしい騒ぎを見た後、しばらく頭の機能が停止してしまったのか、痺れたように何も感じないようになってしまった。


人間って、本当に・・・

欲を追いかけてしまえば、とことん本来あるべきゴールが歪んだりしてしまうのかもしれない。


お金をもっと、性愛をもっと、美しさをもっと、注目をもっと。

気が付かない内に追いかけた先に待っているものは、さっきの恋人たちなのだろうか。


あれはあれで正直な生き方だとは思うけれど、全然羨ましくない。

羨ましいという感情には、そう在りたいという願望も少し混じっていると思うのだけれど。


いやもう本当に悩むのがバカバカしい。


そういう意味で先ほどの変態たちに感謝の心を。


そんな状態だったけれど、普通にレイモンドと会話をして、また会えるといいわねとにこやかに別れた。とても居心地の良い、陽だまりのような人だと心から思う。


だからこそ、お互いをまさかのときの保険にするような関係なんて、失礼だとわかっているからしない。そのぐらいには尊敬し合えている気がする。


好意は存在する。その好意を育てるには、どちらかが踏み出さなければならない。小説の中のように、衝動に動かされていてもたってもいられない、というような関係ではない。


レイモンドと出会い、一緒に旅行をし、何が変わったのか言葉にするのは難しくても、何かが変わったという感覚だけはある。いつかまた会えたとき、成長した私を見せられるように進んでいく。


□  □


帰ろう。


□  □


帰国してすぐに、委員会の会合があった。


シーズンオフということもあり、大きな動きは何もないけれど、ユリウスの妹が「お話を聞いて欲しい」と言うので、部屋に2人で残る。


「兄が部屋から出てこなくなったんです」


「いつから?」


「スカーレット様が出立された頃でしょうか」


「・・・」


「兄を・・」


「私にできるかどうかわからないけれど、ユリウスに会いに行ってもいいかしら?」


「お願いします!」


そう言って頭を下げるので


「そんなにかしこまらないで。準備したいものがあるから、明日でも大丈夫?」


「はい!」


涙目になって感謝されたけれど、私が行ったところで・・とはいえ、引きこもったのは私のせいかも?


プリシラに続いて2人目の引きこもりね。あのとき、プリシラに会いに行っていいかと手紙を書いても本人からの返事は無かったし、ユリウスに会いに行ってもいいのかよくわからないけれど。


それでも、ユリウスの顔を見たいと思う。


引きこもってるなんて、おヒゲ生えてたりするのかしら?

痩せ衰えてたり?


完璧な身なりのユリウスしか思い浮かばない。


「できれば会いたいし、引きずり出したいから準備しましょう」


ユリウスにお土産も買って来ているのだ。本当は、ユリウスから連絡があるのを待つつもりだったけど。


□  □


翌日お昼すぎに着くと、話が通してあったようですぐにユリウスの私室へと案内された。

個人的な話になるからと、皆を下がらせてからノックをする。


「ユリウス?」


返事がないので声をかけた。

すぐに何かガタガタと物音がしたけれど、扉は開かない。


「ユリウスいるの?」


「・・・」


返事がない。


また何か拗らせているのだろうか。拗らせているフリならしていたのだろうけれど、本当に拗らせている場合はどうしようかしら。


「ユリウスが挑戦したくなるような硬さのクッキーを焼いてきたの」


「・・・」


音はしないけれど、気配は動いたような気がした。


「歯を傷めたりはしないし、胃を壊したりもしないけれど、普通よりは硬くて」


「・・・」


「ほら、『一生、金輪際あなたにはクッキーを焼かない』って言ったのに、焼いてきたのよ?気になるでしょう?」


「・・・ㇲ」


「何、何か言った?」


「・・・・」


「ねえ、わたくしが全部たべてしまってもいいのかしら?」


「・・み、身なりがひどいんです」


「どんな風に?」


「お風呂にも入っていないし、着替えてもないし・・」


「え、見たい!」


「そんな・・」


「見せて、お願い」


「ダメです。あなたは私の顔が好みだったのに、それすら・・」


途中から一度間違って変換したせいで「シリル」が「シリウス」表記になっていて、愕然としました。気が付かないポンコツですみません。気が付いた個所はすべて直しました。そろそろこの物語が終わる予感。

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