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目を逸らしたい本当の自分と新しい自分の構築

「何が?」


「私の中身など」


「・・・」


これは慰めて欲しいのだろうか。そんなこと無いわ、あなたの才能も中身も素晴らしいわ、と言って欲しいのだろうか。


上辺だけ取り繕ってこの場を収める技ならある。方法を考えながら・・私がプリシラにしていたことはこういうことなのかと深く理解した。


私があのまま表面だけを取り繕われ続けていたなら、今の私にはなっていない。今の私は前の私より気に入っている。それはきっと成長よね?


それなら私がすることはひとつ。ユリウスに向き合うの。



「あなたに勝手に期待していたような魅力ではないのかもしれない」


ユリウスごめんなさい。一度、抉らせてね。


「あなたの最大の魅力は外見だと思ってきたの。だからどうしてもその外見に似合う行動をこちらは期待してしまう」


「・・・そうですか」


「でも、あなたに歌の才能や楽器の才能、詩を書く才能など求めていなかったわよ?」


「それは、今までやったことないことを」


「そうね。決してプロのような巧さはなかったけれど、それをしようと努力してくれたこと、私はそれがとても嬉しかった」


「格好良くなかったでしょう」


「ふふ、そうね。どちらかというと、可愛らしかったわ」


「かわ・・」


「あと、こうなってから気がついたのだけれど、あなたはとても無口なのね」


「あまり話すとボロが出ますから」


「それでよく数々の女性を口説けたものね」


「決まった台詞と行動をしていただけですから」


「ああ、なるほど」


その答えで何かわかったような気がした。いつも同じような言葉を返され、同じようなエスコート、何を話しても何度会っても上がっていかない親密度はこういうところに起因していたのか、と。そしてそれは私も同じ。だからもう少し踏み込もう。


「簡単に手に入るものに興味はないとは?」


「格好良い私を好きになってくれた人は、格好悪い私を好きになることはないだろうし、上辺だけ取り繕った自分を続けていく自信もなかったから」


「・・言い換えるなら『簡単にかっこいいユリウスを好きになるような人間は、簡単にまた離れていくだろうからいらない』という意味だったと捉えてもいい?」


「・・そうか・・そういうことなのかもしれません。怖かった・・。期待に沿えない人間なのだと思われることも、期待に応えられないのに・・年月とともにどんどん期待される偶像が大きくなっていくことも。そのくせ必要とされるのか確認したい気持ちも・・」


どんどん声が小さくなっていく。


思っていた何倍も、いえ予想すらしていなかったほどユリウスは不器用な人だった。


「ねえ、ユリウス」


「はい」


「まだまだあなたのやったことのない行動を見てみたい」


「う」


「ふふ」


困ってしまっているユリウスが可愛い。困っているのは可哀想な気もするけど、もう少し頑張ってもらいましょう。


「ううう」


「うふふ」


本当に困っているのか、どうか確かめさせてと思いながら。


□  □


「信じてしまうのもどうかと思います。クソだし」


「プリシラ・・」


「中身がかっこ悪くたって、行動はハンサムな人が本当の『かっこいい人』だと思いますけどー」


「そうね。確かに。レイモンドは行動もとてもハンサムだと思うわ」


「レイモンド様がどんな人かはわかりませんが。ユリウス様は中身がかっこいいとは言えません」


同感だけど、なぜかモヤモヤするわ・・。かっこわるいユリウスがとても可愛かったのだけれど。


「異性交遊が激しい人は簡単に信じちゃダメです」


確かに。誠実を心がける男性を流行らせたくて頑張っているのだもの。

・・・だけど・・


「一途でクズという人もいるのでは?」


「どんな人ですか?」


プリシラがきょとんとしているわ。そうよね、お兄様は一途で素敵な人だものね。


「行動を制限してきたり、閉じ込めたり、考え方の自由を奪ったり?」


「それは確かにクソですね」


「私がクズという言葉を使っているのにあなたは・・」


「閉じ込めてしまいたい気持ちはほんの少しあるけれど、そんなことをして悲しませたくないから絶対しない」


「今日は参加が遅いわね、お兄様」


「快感に浸ってたんだ。俺以外の男の悪口を言うプリシラの声を聞けるのが嬉しくて」


「うしろに大きなクズがいるわよ、プリシラ」


「私がかっこいいと思うのはシリル様だけです」


「プリシラ!!」


・・今日もお茶が美味しいわ。


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