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提案

「よくよく考えたら、スカーレット様とユリウス様に結ばれて欲しいなどと思っていませんし、彼の人間的成長みたいなものを手助けしたいとも思ってないんですよねー」


私の部屋に来たプリシラがものすごくどうでも良さそうに言い放った。


・・清々しいわね。


「じゃあ、私が考えればいいのよね」


「そのスカーレット様を手助けします」


「あ、ありがとう?」


「スカーレット様はどういう結婚がしたいですか?」


「そうねえ。結婚はしなくても困らないのよね」


「確かに」


「結婚しない場合はできるだけこの国の役に立てる仕事をすると思うわ。もし、他国に嫁ぐことになったなら、そこでできることをやるだろうと思うの」


レイモンドのところに嫁ぐことになれば、彼の研究を楽しく手伝うことができる気がする。


「この国の貴族、例えばユリウスに嫁ぐとして」


「はい」


「・・私は、何をすればいいのかしらね?」


「さあ?」


「まあ、そんな感じ」


「スカーレット様の結婚感ってスカスカなんですね」


「スカスカ・・」


「やりたいことはないんですか?」


「誰かを支えるのなら、私の苦手なことは支えてもらえると嬉しいし、誰かを愛するのなら、同じように愛して欲しいわ。ただ、国民に愛を注げと言われたなら、無条件に愛を注いでいけるの。だからかしら、個人的に愛情を渡し合うという想像がいまひとつできなくて」


「ふむ」


「国民より大事なもの、国民より優先したい人というのがね・・」


「スカーレット様、私が渡した本はお読みになられたんですよね?」


「ええ、もちろん」


「あの中にあったでしょうが!例えば陽だまりの中で二人でお茶を飲みながら笑いあうシーンや、観劇の後にレストランで感想を話し合ったりしながらお酒を飲んだり、2人で旅行に行って海辺でキャッキャと戯れたり!」


「あー・・あったわね?」


「そういうのをレイモンド様としているとか、ユリウス様としてみたいとか、そういうのを尋ねているのですが」


「レイモンドとは旅行もしたし、お互いに土まみれになって作業したり、雨の音を聞きながら書類をまとめたりしたわ」


「ときめきは?!」


「・・ないわね」


「全くですか?」


「ええ。ないわ」


「ええええーー」


「じゃあ、ユリウス様には?」


「手の温度がとても温かくて心地よかったのを覚えてる」


「まだそこか」


「聞き取れなかったわ?」


「いえ。そうですね・・質問を変えます」


「ええ」


「スカーレット様は、ユリウス様とレイモンド様のどちらを幸せにしたいと思いますか?」


「ええっ?難しい質問ね」


「じっくり考えてみてください」


「そうね・・レイモンド様は既に幸せで『在る』のではないかしら。自分がどう在れば幸せなのかを知っていると思うの」


「なるほど」


「そこに私が入ろうか入ろまいが、幸せの色や形が少し変化するだけなのかも」


「ふむふむ」


あら、深くプリシラが頷いている。


「ユリウスは・・・そうね。難しいわね。今よりは幸せだと思えるようになって欲しいと思うけれど、それが私の協力でできるようになるとは思えないのよね」


「なるほど」


「だけど、ユリウスが本当に変わりたいと動き出したのだとしたら、そうね・・幸せにしたいのはユリウスのほうだと言えるのかもしれない」


今のままだって、彼が幸せだと思うことはできるのだろうけれど。


「わかりました!」


「え、何が?」


「今度会ったときに、彼に課題を出してみましょう」


それはどんな?と聞き始めたら、ヒントはくれるものの私が考えなければならないと言われ、慌てて紙とプリシラペンを出して思いつくことをどんどんと書きつけていった。



□  □


そうして迎えた火曜日。


「ユリウスに課題を出すことにしたの」


「課題ですか」


「ええ」


「いったいどのような?」


「私を口説いて」


「え」


「私を口説くの。ただし、今まで使った方法は禁止」


「・・・?」


「今までに一度でも使ったことのある方法は全て禁止するわ」


「全て」


「ええ。花を贈ったことがあるのなら私に花を贈ってはいけないし、もちろん宝飾品もだめ。ただ、プレゼントを贈るという行為そのものを禁止するものではないわ」


「花もアクセサリーもダメ・・」


「言ったことのある口説き文句もダメだし、行ったことのあるデートの場所もダメ。他には何があるのか想像つかないけれど、あなたが今までに経験のある全ての手段を禁止します」


「・・・」


「大変ね。やめてもいいわよ」


何か色々と思い出しているのか、決心も鈍るのか瞳が左右に揺れているわ。


でも、プリシラは『予想もつかない方法で口説かれたら、スカーレット様への刺激にもなりますから!』と絶賛してくれた。


『簡単に手に入るものに興味ないのなら、散々手こずってみればいいのです!』と少し意地悪な顔でにんまりと笑い、「その顔も可愛い!」と後から参加していたお兄様に抱きしめられて、またきゃっきゃといちゃつかれたのだけれど。


前話のタイトルを直しました。

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