3 聖女と聖獣と精霊の国アストリア
馬車に揺られてアストリアに到着した翌日、早速王様との謁見が組まれていた。王様フッ軽過ぎない?偏ったラノベ知識だと最短でも三日は待たされると思ってたんだけど?え?事前に早馬で連絡してた?いつ?!早業じゃん?
実際に対面したら、私の召喚が如何に重要だったのかを思い知らされた。その場には王様だけじゃ無くて、他にも偉い人達、宰相とか、騎士団長とか、魔法師団長とか、何処何処省長とか二十人くらいのおじさん達が居た。ずらりと並ぶ厳しいおじさん達の間を進み、跪く。
「こちらが召喚された聖女のセンミョウジ・ミサ嬢です」
「うむ」
会話のメインはアーサーと王様。あと宰相さんとか魔法師団長さんとかが補足説明してる。前後の事情なんかを、小難しい言葉で仰々しく言ってるけど、内容はざっくり私が隣の国に召喚されちゃってたよ、困ったねって事。
「そもそも本当に異世界の人間なのですか?確かに見慣れぬ服装ではありますが、顔つきは極東の民族と似ておりますね」
ナントカ省の偉い人がネチっとした言い方で私を値踏みする。その目は無遠慮に私を見ている。視線が胸や腰に集中している気がするのは気のせいだよね?確かにすぐには信じられないと思うけど、それ、私の前で言う?こちとら長年連れ添った家族を亡くしたばっかりで、無理矢理こっちに連れてこられたんやぞ?イラっとしながらそのおじさんを睨むと、ベティが慌てて私の腕を引いた。
「気持ちはわかるけど、我慢して」
「ごめんなさい」
小声で話し合ってるうちに、話は進んだ様で、私が本当に召喚された人間なのか確認する流れになっていた。鑑定の石板で、私のステータスを確認したい、との事だった。
(個人情報丸出しじゃないですかヤダー)
アーサーにここにいる全員に見られたくない、もっと人数を絞る事は出来ないか?と小声で相談する。彼は少し悩んで、王様と宰相さん、騎士団長と魔法師団長、そしてパーティの代表としてアーサーの五人が確認する様に提案して受け入れられた。スキルは事前に申告済みだけど、何も信用してないさっきのおじさんにだけはあれこれ見られたくなかったのでホッとした。
「では此方に」
「はい」
呼ばれるままに、玉座に近寄って用意された小さなテーブルの前に立つ。その周りを五人が壁になる様に立ち、石板に触れる様に指示された。石板はA4くらいの黒味の強い灰色で、食パンの様に上だけが丸い。指示された場所にぺたりと触ると、大理石の切り口の様につるりと冷たかった。触れて数秒は何も起きないけれど、すぐに光る文字が浮かび上がってくる。内容はステータスで確認した情報と同じだ。
「おお……」
「これは、確かに……」
みんなが見ているのは称号の部分だ。「異世界からの召喚者」と書かれている。ご納得いただけた様で一安心だ。他のスキルやステータスは他の人には内緒にしてくれるとのことだった。
旅の疲れもあるだろうから、今日はこの後、一日ゆっくり休んで、明日の午後イチで聖獣の元に向かって欲しいと王様から直々に頭を下げられて、悲鳴を上げてしまった。それ以上に驚いたのがお偉いさん達だ。口々に王が頭を下げるなど!と騒いでいる。
「や、やめてくださいっ!頭を上げて下さいっ!そんな事しなくてもちゃんと会いに行きますから!」
「よろしく、頼む」
王様の目には焦りがはっきりと浮かんでいた。
なんとか謁見室から退室して、案内された部屋はとてつもなく広くて、全く落ち着かなかった。ベティ達を呼びたい、と部屋付きのメイドさんにお願いすると、すぐに全員来てくれた。取り止めのない話をしながらその日を過ごし、夜は女子三人で一緒に眠った。ベッドは広過ぎて、三人で寝ても余るほどだった事をそっと記しておく。
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