部活へ向かう
学期の初日とあって、午後の早い時間で日程が終わっている。帰宅する生徒。久しぶりのクラスメートとの夏休み思い出話が終わらない生徒。さっそく部活に勤しむ生徒などなど。
そんな最後尾に当てはまる辰流相手に、道下が確認しようとしたのは、依頼していた一品のことである。
辰流の所属は図工部である。高校生にもなり、小学校の授業科目名を冠にするこの部は、学校公認の部ではなく、同好会扱いである。発足したのが去年という歴史の浅さを除き、部の認定にならないのは、単に部員数が少ないからであった。辰流を含め二名。そのような団体は、この校には少なくないのだが、図工部がとりわけ有名なのには他に理由がある。
「お前もとうとう魔女色に染まったんだな」
道下は憐憫の情をため息に含ませながら、辰流の左腕を指した。そこには白い半袖の開襟シャツに隠れることなく、真っ白とは言えない包帯が手の平から下腕全体にかけて巻かれていた。
「厨二病とやらも大概にしておけよ」
ほとほとと呆れている道下に、
「先輩は魔女じゃねえ。それにこれはだな」
魔女扱いされた、彼にとっての唯一の同部所属であり、直属の先輩の優秀さに対する揶揄を慣れた感じであしらいつつ、自分の腕のことをも反論したかったのだが、完全否定しようにもためらいがどうしても出てきてしまった。