表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

one-sided love

作者: TAKARA

どうぞ宜しくお願いします(*^^*)


  

  片想い・片方だけの愛


  one-sided love



 私は彼が好きで

 彼は彼女が好きで

 彼女は彼が好きで

 彼は私を好きで・・・・・・


私は彼が好きな彼女が彼を好きで

彼女が好きな彼が私を好きな事を知っている。


だから、知らないフリをする。

だから、好きじゃないフリをする。

だから、おどけて馬鹿なフリをする。

そして、いつも最後は一人で泣く。

もしかしたら彼女も泣いているかも知れないけど。


それぞれが一方通行の好き。

自分の好きな人は他の人を見ている。

どうしてこんな事になってしまったんだろうか・・・

誰かが諦めた瞬間にこの歪な一方通行は法則を失い崩れるのだろう。

私が彼を諦めるべきか・・・・

私が彼を受け入れるべきか・・・


誰が幸せになれる?わかんない。

終わりにしたいのに終わりに出来ない。




目は口ほどに物を言う


本当に的を射た良く出来た言葉だと思う。

いくら誤魔化しても、無意識だとしても気が付くと1番気になるものを追っているのが目だと思う。

私も気がつけばずっとその人を目で追っていた。

飽きもせず何度も何度も。

だからこそ気が付く私の目が追っているあの人の目は、私じゃない誰かを追っているって事に。

そして気が付く私を何度も見ているその目を。


嘘をつくと揺れるのも目だ。

何もかも気付かせないなら目を瞑るしかないのではないかと思う。


だけど、知らないフリは苦しかった。何をしても楽しく無かった。

いつも心が握り潰れるように痛かった。

もう、楽になっても良いのだろうか。何もかも諦めて違う道に進むべきなのかもしれない。


だけど、選択する前にその均衡は崩れてしまった・・・・・


放課後の委員会が終わって教室に鞄を取りに戻った。

そして、教室で泣いている井上さんを抱き寄せてる三浦君を見てしまった。そこには江原もいた。


そして私は・・・・・逃げた。


読んで字の如く猛ダッシュで逃げた。泣きながら。

風で後ろに飛んで行く涙を拭う事もせずに。

後ろから追いかけて来る足音がする。

きっと、私を好きな彼が追いかけて来てるのだろう。

なぜ放っといてくれないのかと、苦しい呼吸を繰り返しながら思う。

掴まれた手首の強さにこの逃亡が失敗した事を知る。

振り払おうとしても掴まれた手は離れない。


「離して!」


「待って、なんで泣いてんの」


そこでピタリと体は動かなくなった。

彼の声じゃなかった・・・私を好きな彼の声じゃなかった。

それは私が好きな彼の声だった。

予想外の驚きにポロリと一粒の涙を落として、思考と涙は止まる。


「なんで・・・」


「なんでって、泣いてるのに放っとけるかよ」


「だって、井上さんも泣いてた」


「そうだけど、上総も泣いてるのだろ」


「別に私の事は気にしないで教室に戻った方がいいよ。だって・・・三浦君は井上さんの事が好きでしょ・・・」


自分で言った言葉に酷く傷つき胸を抉られる。


「は?俺が?有美を?」


有美と言う彼の言葉にまた胸が痛む。私は上総 葵だけど「上総」と名字でしか呼ばれた事が無いのに。


「私気付いてたよ。ずっと三浦君が井上さんを見守ってた事・・・だけど井上さんは江原を・・・だから、誤魔化さなくても良いよ私には。ずっと見てたから分かるんだ」


「・・・まあ確かに見守ってはいたかな・・・てか、上総はずっと俺を見みてたって事?江原じゃなくて?」


なぜ江原の名前が出てくるのだろう。彼は確かに私をよく見てだけど、私からは見てない・・・はずだ。

ちょっと自信がないのは、強い視線を感じて見つめ返した事が何度もあるからだ。


「ち、がう・・・違うの、気持ち悪いかも知れないけど、三浦君を見てた・・・(こうなりゃヤケクソだ言ってやれ!)ずっと好きだったから」


そう言うと、一瞬間を置いて三浦君は顔を真っ赤にして大きな手で口元を覆った。

・・・・・何か思ってた反応と違った。迷惑そうか、申し訳無さそうな顔をされると思ってたから。


「・・・そーか・・・そーだったのか・・・・・ぷっぷぷくくく」


・・・最悪だった。

何かに納得した三浦君は私の告白に対して笑い出したのだ。

余りのショックに止まっていた涙がまた溢れだした。

色んな事を諦めて玉砕覚悟で告げた言葉をまさか笑われるとは思わず、徐々に腹が立ってきた。


「何で・・・笑うの?ひぐっ、ぐすっ」


思わず恨みがましく責めるように三浦君を見て言った時だった。

掴まれていた腕を突然グイッと引っ張られればよろける訳で。

つんのめるようにぶつかったのは三浦君の胸だった。

そして三浦君の両腕は大事そうに葵の身体を抱き締めた。

葵は今起きてる事について行けずパニックだった。


「ごめん、嬉しくて。泣くなよ」


「待って・・・何でよ・・・やめてよ」


違う人が好きなくせに何で私を抱きしめるの!

慰めなんて要らない!これ以上揺さぶらないでよ!!

三浦君の胸を押し返そうと両手に力を込めてみるも・・・ビクともしない。

笑って嬉しいとはなんぞや?と葵は思う。


「有美の事は好きだけど・・・」


ヤダヤダヤダ、そんな言葉は聞きたくない!

嫌嫌と顔を三浦君の胸へと擦りつける。これで涙やら鼻水やらがシャツに付こうとも離さない三浦君が悪いと開き直ってみる。


「仕方ないよな・・・・・・・・・・・・・妹だし」


は?なんですと?と擦り付けるのを止めて三浦君のシャツが皺になるくらい掴むと恐る恐る顔を上げた。


「えっ?・・・いも?・・・何でウソつくの。歳一緒だし、名字だって違う」


「二卵性の双子。親離婚して分かれて暮らしてる」


わぁー分かりやすく、端的なお答えありがとうございます。


「えっ?・・・そんな展開ってあるの・・・」


「あるね。今、目の前に。だから、上総が言ってた見守ってるってのは間違いじゃない。一緒に暮らしてないから余計に心配だし、アイツは数分だけのくせにって嫌がるけど兄ちゃん面してる」


双子?似てない。そうか・・・二卵性だから。いや・・・そう言われて見れば雰囲気は似てる。だからこそ井上さんに惹かれたのかと思ってたんだっけ。

まさかの展開に三浦君の顔を見たまま時が止まる。その表情には嘘は無いし、こんな手の込んだ嘘をつくとも思えなかった。

そんな、三浦君は私を見てにこにこと笑ってる。


「上総・・・違うな。これからは葵って呼ぶから。葵も立輝(たつき)って呼んでくれる?」


「へ?何で」


「・・・おかしいな?俺達、両想いだったんだろ?普通、気持ちが通じ合った男女は付き合うんじゃないの?」


「両想い・・・あれ?それって三浦君も私を「好きだよ」」


「う「そじゃない」」


めさか・・・違う。まさか。そんな。カバな・・・違う。バカな。


「だって、うそ。そんな・・・だって」


「ちょっと落ち着いて。直ぐに信じらんねーのも分かる。それは俺も一緒だけど、現実だって、本当だって信じる。夢オチとかじゃない。せっかく両想いってわかったのに無かった事にはしたくない」


抱き締めてる腕に少しだけ力が籠もって、何だか安心出来た。

それでも不安そうな葵の顔を見て立輝は喋り続けた。


「最初は確かに一目惚れって感じじゃ無かったんだけどさ。今までの話の雰囲気だと、葵も有美が江原を好きなの気がついてるよな?」


「・・・うん。知ってた」


「で、江原が葵を好きだって事も気づいてた?」


自分で言ったら、自惚れてるって思われるかも知れないけど・・・


「その、もしかしてとは思ってた・・・よく目が合うから。でも、小学生から知ってるし、違うって思おうとしてた」


「気づいてたんだ・・・んだよあぶねー。まあ、それで有美によく相談受けてたんだよな。江原が葵を好きだからどうしよう。ってな」


あぶねーは何があぶねーですか?スゴクキニナリマスル。


「それから、意識してよく葵を見るようになった。見る度に気になって、理由なんて分かんねぇけど気が付いたら好きだった。でも、江原と見つめ合ってるのを何度か見たし、二人は仲良いだろ?江原って呼び捨てで呼ぶくらいだし、こりゃ兄妹で玉砕かな?って思ってたんだ」


「え?見つめ合ってはない・・・視線を感じて顔上げると江原が見てたからだし、ほら、よく三浦君と江原が一緒に並んで立ってたでしょ・・・それをこっそり見てて目があっちゃった事は何度かあるかも・・・」


「そーか・・・俺を見ててな・・・そーか、くく」


「あーまた笑う。やな感じ・・・」


「違うって、嬉しいんだから満喫させろよ。これでも、何で江原なんだろ、俺じゃないんだろってめちゃくちゃ思ってたんだ。江原には悪いけど、今までの葵の視線が全部俺にだったって分かったらそんなのニヤけるしかないじゃん。テンションぶち上がるわぁ」


「ねぇ、あの、三浦く「た・つ・き」」


「そんなの直ぐには無理だ「たーつーき」」


これはダメだ。きっと、立輝と呼ぶまでこの遣り取りは続くだろう。


「・・・た、たつ、き君」


「君もいらないけど、取り敢えずいっか。なに?あ・お・い」


「えっと、み・・立輝君と江原って仲良いから、その気不味くならない?」


「う〜ん・・・どうかな?実は江原から直接、葵の事を好きだって聞いた事は無いんだよな。勝手に雰囲気で好きだろうなって思ってただけなんだ。葵と江原は最初から仲良かったから俺が入り込む隙間も無いし、葵と付き合えるって正直思ってなかったんだ。だから俺も葵の事が好きだって江原には言ってない。どうなるかは分かんないけど、江原にはちゃんと話すつもり。それで例えば気不味くなっても仕方無いと思ってる。江原に遠慮するつもりもない。俺には葵の方が大事だから」


「・・・あま・・・立輝君ってそんなタイプだったっけ」


「じゃあ、葵は江原と仲悪くなるなら俺の事諦めるの?」


「え、やだ、それは、無理。ずっと好きだったんだもん。私こそ、私を見てない立輝君を正直諦めてたんだから」


「・・・おかしいなぁ、俺も結構、葵の事見てたんだけどな?

好きな飲み物は無糖のカフェラテとジャスミン茶。好きなおにぎりはたらこで好きなデザートはバームクーヘンだよね。あ、あとたこ焼き!」


「・・・凄い・・・当たってる。・・・けど、何で飲食限定なの・・・私ってそんなに食い意地張ってた?」


「いや、食べてる時に幸せそうに笑う顔が可愛くて好きなんだ」


「・・・・・そ、そう、ですか・・・」


余りにどストレートな立輝の言葉に葵の頬はカァーっと熱を持ったのが分かる。


「これからは食べ物以外も葵の好きな事、沢山教えて」


「たらこのおにぎりは・・・立輝君が好きだって言ってたから、私も好きになったの・・・・・たこ焼きも・・・」


はぁ。と頭上からため息が聞こえると、ぎゅうぎゅうと強く抱き締められる。そして、葵もおずおずと立輝の背中に腕を回した。


「あー葵が可愛過ぎてたまらん」


「・・・私は立輝君がカッコ良すぎてたまらんです」


「なにその張り合い・・・悶えるわぁ。凄い恋愛テクだな」


「テクとかじゃないし・・・立輝君がいっぱい伝えてくれるのが嬉しいから、私も我慢してた気持ちいっぱい伝えたいんだもん」


「ほら、すげぇテク」


「もう!テクじゃないって!」


ぷぅ。と怒ればくすっと笑った立輝君の顔が近づいてきた。何だろうと思った瞬間、膨らませた頬からチュッとリップ音が響く。

咄嗟に頬に手を触れ驚きに目を見開いて立輝君を見上げる。


「怒っても可愛いだけだったから、我慢出来なかったわ。ほっぺただから許して」


葵は小さな声で何か言いながらちょいちょいと手で立輝を招く。


「ん?なになに?「チュッ・・・仕返し」」


立輝も一瞬驚いたようだったが直ぐに気を持ち直し「あ~~どうせなら口にしてくれても良かったんだけどなぁ」と言った。

葵は照れくさそうにはにかむが満更でもない。好きな人とキスしたいのは当たり前だ。


「それは、また今度」


「ねぇ、今度っていつ?後で??明日?明後日?」


「今度は今度だって」


「あぁ、今日眠れなくなったわ。期待でドキドキする」


「そういうの口にしないで、恥ずかしい」


「葵はドキドキしない?」「・・・する」「だよね」


立輝は葵の頭に顎を乗せてぐりぐりとしていた。

なんとなくもどかしい気持ちなんだろうなと思った。

葵も本当はもどかしい。


「ずっとこのままでいたいのはやまやまだけど・・・流石に有美も心配だから戻ろうか」


「そうだった、井上さんも泣いてたし戻ろう」


しぶしぶといった感じで包容を解いた立輝は、笑顔でスッと手の甲を上に向けたまま葵へ手を差し出す。

葵は手の平を上に向けて立輝へと差し出す。

交わった二人の手はしっかりと合わさり固く結ばれた。


最後まで読んで頂きありがとうございました。


また違う作品でお会いできたら嬉しいです。



              2023/7/9 TAKARA

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ