新人冒険者ミカルと相棒のレイフ
「よっし! 片付いたな。
レイフ、町に戻ろうぜ」
〘んん〜〜〜……っ……。たくさん動いて、満足!〙
オレは新人冒険者のミカル。相棒のレイフと故郷の村を出て、領都を目指している。立ち寄った冒険者ギルドで依頼を受け、路銀を稼ぎながらだ。
「そうだな。今日も俺より倒した数も、強いヤツも多く倒したもんな」
〘ミカルは人だけど、オレはまだ子どもでもフェンリルだからな! ミカルより強いのは当たり前だし、動けるのも当たり前だ!〙
冒険者になる試験は、誰でも受けられる。成りたいヤツが全員なれないのは、農民がいなくなるからだ。
その為、毎年冒険者になれる数が発表される。そして、試験を受け、合格した者だけが晴れて冒険者になれるんだ。
俺もその試験を受けた。相棒のレイフと共に。試験を受けた会場で、一番優秀な成績だったそうだ。
これも、レイフのお陰だな。
レイフを拾ったのは、十年前になる。レイフは弱って、母フェンリルに見捨てられていた。魔狼とか、森狼とか……もっと普通の魔物の狼の類の子どもだと思ったさ。それが、それが育ててみればフェンリルだったのには驚いた。
「ああ、そうだな。今日もありがとうな」
〘へへ……っ。たくさん動いてミカルの役に立てるなら、オレの方こそ嬉しいよ!〙
レイフの頭を撫でていたが、そう言うとレイフは俺の体に頭を擦り付ける。これは、甘えている時の行動の一つ。
人には懐かないフェンリルのレイフがそうしてくれるのは、俺もとても嬉しい。
「街に付くのは明日になるだろうから、洞窟を探しながら山を下りるか」
〘むー。オレが成獣になったら、背中に載せてやるから。それまでは、ミカルの足に合わせる〙
「おお! いいな、それ! 楽しみだ!」
〘へへ……っ。オレも楽しみだよ!〙
今日は『高地殺人蜂の巣』を取ってくる依頼で、かなり山の上に来ている。この山の、高地に生息する殺人蜂。その中でも、高山マラッジという花の蜜を集めた蜂の巣は、高級ポーションの材料の一つになるのだ。
蜂は普通の大きさの、普通の生物。新人冒険者にも、登山さえできれば熟せる高額依頼の一つとなっている。
それを狙った登山だった。しかし、夏間近とはいえ、高山の夜はかなり冷える。
「レイフに載れるのもいいけど、夜、一緒に寝るのも好きなんだよな」
〘それは、勿論! オレだって好きさ!
いつかもっと大きくなったら、背中に載せてやるし、夜は包んで温めてやるからな!〙
「それは良い! いつか俺を載れる程大きくなっても、一緒に寝てくれるなんて最高だ」
登山は登りより、実は下りがキツイ。話をしながら、しっかり踏ん張りつつ険しい下り坂を下る。
レイフは軽やかに、たったか進んでいる。午前中はこの山を登ったし、蜂の巣を取っている時に襲って来た魔物の討伐もした。それでもあれだけ軽やかな足取りなのには、ちょっと羨ましく思ってしまうな。
「あ、あったあった! レイフ、今夜はここに泊まろう」
〘手頃な広さの洞窟だね。 フンフン……フン。うん、新しそうな魔物の臭いはしない。気配もない。安全そうだよ!〙
「そっか。教えてくれて、ありがとう。
じゃあ、ここに泊まりで決まりだな」
〘泊まり〜〜、泊まり〜〜〙
レイフは変な節回しで、泊まりと歌っている。これは、たまに俺が歌っているのを真似たらしい……。俺、そんな歌……歌っているかも?!
奥行き、3ミュケほど。幅は2ミュケってところか? そんな洞窟の中を、小石を払ったりして、横になって寝れる用意をする。レイフと二人、変な鼻歌を歌いながらだ。
「よし、これで横になって眠れる。飯にして、その後は寝よう。朝日が登ったら、すぐに下山したいからな」
〘ん〜〜……。オレ、ちょっとお腹が空いたから、狩りをしてくるよ。結界を張って行くから、遅くなったら先に寝てて〙
「そっか。最近、また大きくなっているから、一昨日食べた角兎じゃ物足りなかったか?」
〘んーん。あの時は満腹だったよ。いっぱい動いて、もうお腹が減った感じかな?〙
「そっか。気を付けてな」
〘うん! 登る時に、美味しそうな匂いがしてたから! どんなヤツがいるのか楽しみ! 行ってくるね!〙
頭をひと撫でしてやると、レイフは洞窟から駆けて出て行った。そして、外に出ると立ち止まり、出入り口に結界を張ると、一目散に狩りへと駆け出した。
俺はレイフを見送ると、魔道具の簡易コンロや鍋、食材等を無限収納から取り出す。そして、簡単な食事を作り、充分な量の食事を摂った。
兎肉とチーズ、ソーセージとピクルスのオープンサンド。それに、野菜スープ。
肉はレイフが狩りをしてくれるので、困る事はない。売って、野菜やパンも買える。獲物によっては、皮や毛皮、牙や爪も売れる。そのお陰で、食費や宿代、武器防具を新調するお金にもほとんど困らない。
その分、鍛錬に時間を使う事ができている。
食事が終わると、少し食休みだ。レイフの帰りを待つ間、少しでも鍛錬をしようと思ったのだ。
◇◇ ◆ ◇◇
〘ただいまっ! まだ起きてたんだ〙
「お帰り。おう、そんなに遅くならないだろうと思ったからな。
獲物は大物だったみたいだな」
〘へっへー! そうなんだよ! 獲物は、崖鹿だったんだ。 まだ丸いけど、角を取って来たからね! 外に置いてあるから〙
「おお、助かる。この時期は、まだ袋角の個体も多いからな。
でも、そろそろ剣を買い換える資金を、しっかり貯めようと思ってたから、本当に助かる。ありがとうな」
〘どういたしまして。角は食べないから、オレには要らないしさ〙
まあ、それはそうなのだが……。それでも、角を取り、ここまで運んでくれたのだ。野生のフェンリルなら、そんな事はしない行為だろう。そんな事を態々してくれたのだ。それには、ちゃんと感謝すべきだと思う。
口周りは、いつものように水魔法で洗われていて綺麗になっている。体は、土に体を擦り付け、綺麗にしている。その為、酷く土埃が舞う。
濡らした布で丁寧に体を拭ってやると、くふんと満足げに鼻を鳴らす。
「さて、そろそろ寝るか」
〘抱っこだよ!〙
「ははは。勿論抱っこさ」
下には薄い敷物。その上に横になると、レイフを腕枕してやる。そして、上に毛布を被る。
これが俺とレイフの、寒い夜のいつもの寝方だ。
なあ、レイフ。いつか俺が爺さんになっても、側にいてくれよ。冒険も、一緒にしような。いろんな所を回ろうぜ。
大事な相棒。おやすみ。また明日……
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