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第89話 ガルーア⑤

 ニックは、ナディアが戦闘時のようなスピードでこっちに駆けてくることに気がついた。

 そのまま手近にいる旧大陸の兵士の顔を覗き込む。そしてナイフでその男の喉元を切り裂いた。

「おい! 正気か!? 何してる……」

 そう言いかけたニックは、その兵士の身体がドロリと溶けて崩れ落ちた光景を目にして絶句した。

「これって……」

「瘴気で生み出される眷属みたいだけど、ほとんど何の知性もないはずのそれが兵士に擬態してる。私達が今まで気付かなかったくらいの精度で」

「そういやこいつら今まで口を利かなかったな。お高く止まったやつらだと思ってたがそういうことか……」

「こいつら全員そうなのか……?」

 集まってきたギルドメンバーも、周囲の兵士達を不気味そうに眺める。

「たぶんそう。よく見たらわかるはず」

「ちょっと待て。全員だとしたら、王は? アイツはベラベラ喋ってただろう?」

「アイツって言わないで」

 ナディアがニックを窘める。

「もちろんあの王も偽物の可能性が高い。王がいなくなるまでは兵士達は普通に動いてたと思うから、操っていたのはアイツかもね」

「ああ……ってお前も!」

「でもそうだとしたらナックルが心配。あと、旧大陸の人達も。私も戻らなきゃ」

「どうやって戻るんだよ。ナックルは向こうに行っちまったってのに」

「それは……」

 ナディアは歯噛みした。いくら考えても、答えが出そうにない。

 そんな時だった。

「みんなー! みんなー! お父さんが目覚めたよ!」

 ダミアンがそう叫びながら、洞窟から勢いよく飛び出してきた。


      ***


「魔法使い? 魔界にはいないと思っていたけどな……」

「リリス様があの獣人共を従えて満足されるような御方に見えるか」

「知らねぇよあんなアバズレの好みなんか」

「口を……慎め!」

 魔法使いの老人が腕を軽く振るうと、生み出された眷属の群れがナックルに襲いかかった。

「わっ! 危ねっ!」

 ナックルはヒラリヒラリとジャンプして動きが遅い眷属を避けたが、すぐに巻き付いてる包帯を引っ張られて地面に叩きつけられる。

「フギャ!」

「貴様のような小物に構っている暇はない……私はリリス様より直々に旧大陸征服の命を受けたのだ」

「へっ! テメーみたいな雑魚に何ができる。こんな泥人形がどれだけあったってクソの役にも立たねぇよ」

「……生かしておいた方が有益かと思ったがそうでもなさそうだな」

 魔法使いがツカツカとナックルの元へ歩み寄った。その拳を、禍々しい茶色いオーラが纏う。

 ナックルの心臓めがけて、その拳が振り下ろされた。

「おっと」

 その瞬間、ナックルが身体を反らしたことにより、その攻撃でナックルを拘束する包帯が断ち切られた。

「御託は終わりだ。戦ろうぜ」

 残りの包帯を弾き飛ばしながら、ナックルがニヤリと笑う。

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