表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/117

第86話 ポリアス③

「え……なん……で?」

「やっぱり梓なんだな? 梓なんだな!?」

 父は私に勢いよく近づいて、両肩をグワングワン揺らした。

 周りを歩く人達が怪訝そうにこちらを見る。

「ちょっと待ってちょっと待って! わかるの?」

 なんとか興奮する父を引き離し、問い質す。だって、今の私は、リリスなのだから。

「そうじゃないかとは思ってたんだ……事故の時、実は奇跡的に脳へのダメージはほとんどなかったんだ。だけど意識はずっと戻らなかった。身体は順調に回復してるのに」

 父は早口でまくし立てた。

「梓は不自然に、平穏に眠り続けた。もちろんそういうこともあると思う。でも、梓を引いた運転手が目撃したんだけど、事故の直後、その場が眩く輝いて、やけに鈍い色の虹が出たと」

 え、それって……

「警察はそれを運転手の幻覚と片付けた。事故のショックによるものだとね。でも僕はそれを"道"だと考えた」

 え、なんで嘘でしょ?

「"道"を知ってるの?」

 なんか、夢を見てるみたいだ。

「世間的には知られていない。ただ、シリコンバレーでは昔から情報が流れていた。"扉"と"道"の観測結果をヒントにして、開発された技術も多い。インターネットもその一つだ」

 そういえば、父は昔、アメリカにいたと言っていた。以前、その頃の父の同僚だった人が家に来た時、父はリーナス・トーバルズ?とも肩を並べたような伝説的エンジニアだったと聞いたことがある。

「事故が起こった時、どういうわけか"扉"が開いた。梓が意識を取り戻さないのは、何か関係があるんじゃないかと情報を集めていた。そして」

 父はそう言ってソラリスを指した。

「君が使っていた言語は僕が一度も聞いたことがないものだった。僕は君達がこの世界の人間じゃないんじゃないかと思った。そしてもう一人の方を見た時、直感的にわかったんだ、梓だって」

 まだ理解が追いつかない部分もある。でもなんか、泣きそうになった。

「何があった?」

 私は話した。今まであったことを、全て。


      ***


「そんなことが……荒唐無稽過ぎる。にわかには信じがたい……」

 三人で入ったファミレスで、父は頭を抱えた。ソラリスは注文用のタブレットを興味深そうにしげしげと見つめ、料理を運んできた猫型ロボットにひどく驚いていた。

「え、でも色々と情報を知ってたんじゃないの?」

「"道"の向こうのことはほとんどわかっていなかった。別の世界があるんじゃないかという仮説は立っていたが……」

 父はスマホを取り出した。

「ただ、この世界にある剣については心当たりがある」

「ほんとに!?」

 私は耳を疑った。まさかこんな近くにいるなんて。

「心当たりどころかってところかな……僕はこの剣のために、日本に帰ってきたんだから」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ