第85話 ガルーア③
エラボルタがナックルと共に新大陸を去った後、残された人間達はいよいよ途方に暮れることになった。
「そもそも……あいつらはどこから来たんだ。予兆は何もなかった」
ジェイが呟いた。
「何? あいつらは"道"から来たんじゃないのか!?」
ニックが驚いて尋ねた。
「いや、マットからは、"道"は異常なしだと聞いている。そうなんだろ?」
ジェイが通信機に向かって語りかけた。
『ああ。ここから出てきた形跡はなかった。センサーにも何も記録されてない』
マットは、『道の戦い』以前に侵入した怪物達を狩りに行ったアマゾネス達から監視の役割を引き継いでいた。センサーは戦いから戻ってすぐに設置したものだ。
「じゃああいつらはどこから来たんだ……」
ザワつくギルドメンバー達。
「冥王は剣を使って新たな"道"を作っていた。天界でもそんな話を聞いたと思う。魔王の持つ剣で、新たに"道"を作ったんだろう」
ナディアが言った。
「……じゃあずっと勇者の剣があの"道"を封印してたのは何だったんだよ。意味はなかったのか?」
「それは私にもわからん」
「とりあえず……あいつらがこっちに来た新たな"道"を叩けば良いのか?」
「まぁ見つけたところで俺達にはどうにもできないだろうけどな……」
再び一同を絶望感が襲う。
「ちょっと待て、じゃあ旧大陸の方にも直接魔族が行っている可能性もあるってことか?」
「そうかもね。旧大陸の情報は、なかなかこっちには入ってこないから」
慌てるニックとは対照的に、冷静なサムが言った。
「ナックルが戻ってきたら状況を聞いてみよう」
「そういや遅いな……まだ戻ってないのか」
***
魔王が剣を拾おうとしたタイミングで、再びブルースがその剣を撃ち、遠ざける。
しかしその程度の抵抗など何の意味もなく、次の瞬間にはその剣の柄は魔王の手の中にあった。
「小癪な……時間稼ぎのつもりか! 貴様位、いつでも殺せるんだぞ?」
「お前こそ、何をそんな焦ってるんだ……? そっちから俺達の世界に攻め込んできたくせに、身勝手な」
「黙れ! 私の欲望は、留まるところを知らないんだ!!」
「お前……何を望んでるんだ? なんでそんな俺達の世界に拘る? 聞けば、世界は他にもまだあるらしいじゃないか」
「話は終わりだ。長い付き合いだから今までは容赦をかけてやったが、貴様ともこれでおさらばだ」
「よく言う。ジャックもメリルも殺しておいて」
「私の邪魔をするやつに、容赦をするつもりはない」
魔王はブルースの首に刀身を軽く当てた。
「死ね」
だが、ブルースは動揺することなく素早い動きで姿勢を下げ、魔王の腰元に銃口を押しつけた。
そしてダミアンがつけた傷跡に、二連撃ちの接射。
「ぐわぁぁぁっ」
「まぁそう言うな。ゆっくり話そうじゃないか」