第84話 ポリアス②
「わ……大きい。ここが病院?」
「そう」
山の手にある総合病院。この町で私が運ばれているとしたら、ここしかない。
「村の診療所と全然違う……ほんとに人多いんだね」
「ここなんか全然……比べものにならないくらいの大都市がいくらでもあるよ」
なぜか得意気になってしまう。
フロントで尋ねると、『山梨梓』が五階の病室に入院していることがわかった。
怪訝そうな顔で「どういったご関係ですか?」と聞いてくる係の人を「友達ですっ!」となんとか躱し、そそくさとエレベーターに乗り込む私達。
扉が開くと違う景色になっていることに、ソラリスが「魔法……?」と驚いていた。
教えられた部屋番号の、扉の前へ。急に緊張してきた。考えてみたら、あの事故以来どうなったか、私は知らない。脚とかグチャグチャになってたらどうしよう。
意を決して、扉を開けた。相部屋。私のベッドは、一番奥らしい。
カーテンを開ける。いた。
……少し、ほっとした。顔に傷はなく、まるで眠ってるみたいだ。
「これがリリス……じゃなかったアズサなの?」
「そう」
よく見慣れたすっぴんの、私の顔。でもこう改めて端から見ると、なんだかすごい変な感じだ。
おそるおそる、布団を軽くめくってみる。右腕と右脚に大きなギプス、そして胴にはコルセットのようなものがはめられていた。
うぅ……
覚悟はしていたが、自分まで痛いような気になってしまう。いや、自分なのか。
「……行こっか」
私は布団を戻した。
「もういいの?」
「うん」
「これからどうするの?」
「うーん……」
全く見当もつかない。だって聞いたことないし……どうやって情報を……
「あ!」
「え?」
急な私の大声に、驚くソラリス。
「ネットだ……スマホ! 私のスマホは?」
「何それ?」
あっちの世界に長く居すぎて忘れてた。
私はベッドの周りをサイドテーブルや引き出しを探した。
「あった……」
使い慣れた相棒。だけど画面の端に少しヒビが入っていた。嘘でしょ、点いてよ。
……良かった。点いた。充電もされてる。これのパスコードは、私しか知らない。
「うーん……」
『剣 伝説』とかで調べてみても、何かのアニメやマンガの話しかでてこない。
「ちょっと落ち着ける場所で、対策を考えよう」
私は一緒に置いてあった充電器を掴んだ。サイフはなかった。でも、スマホに入ってるICにある程度チャージしてあったはず。
「行こ」
ここでできることは、もうない。
***
……!?
病院の廊下で、私は慌ててソラリスを壁際に寄せ、その後ろに隠れた。
「ど、どうしたの?」
父だ。お見舞いに来たのだろうか。
いつも通り、でも少しくたびれたその姿を見ただけで、泣きそうになった。
そうだ。どうせ私だってわからないんだ。スマホをとったことがバレないうちに早く行かないと。
そう思った私は、堂々と歩いてすれ違うことにした。軽く会釈もした。
そしてすれ違って数歩進んたところで、後ろから声が聞こえてきた。
「梓……?」
え?
振り向いたら、父がこっちを見ていた。