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第73話 天界へ③

「……ったく、信じらんねぇよ。なんで俺までこんな目に……」

 腕を組んだナックルが、私の目の前でぼやく。

「えー、私絶対来ると思ってたよ」

「私もー」

 私はソラリスと目を見合わせる。

「うるせぇ! 大体天界は俺の肌に合わねぇんだ!」

「どういうことよ? 来たことあるの?」

「こんなとこ来たことあってたまるか!!」

 ナックルは、その後もしばらく、何故かずっと不機嫌だった。

「……で、これから一体どうすればいいんだ?」

 ニックさんが辺りを見回す。私達は見知らぬ森の中にいた。

 あれから、アルハンブラさんが作り出した虹色の光の"道"に吸い込まれた私達は、次の瞬間この森に吐き出されていた。

 吐き出されていた、という表現で明らかに正しい。私達は三メートルくらいのところから落下し、そのおかげでソラリスやナディアさんはしばらく気を失っていたからだ。


      ***


「あっちに集落がありそうだ」

 周囲を探っていたナディアさんが、戻ってきてそう言った。

 私達も立ち上がる。

 辺りを警戒しながら歩いていると、ソラリスが、ん? と軽く首をひねった。

「どうしたの?」

「いや、なんかここ知ってる気がして……」

「え?」

「あそこだ」

 背の低い木々の向こうに、村のようなものが見える。

「嘘……!? クリル村……?」

 え? 私も、目をこらしてよく見てみる。そういえば、似てる……?

「確かにここの植生はマサイヤ地方の……」

 ナディアさんも、側の木に茂る葉に触れながら呟く。

「何!? じゃあ俺達は天界じゃなくて、旧大陸に飛ばされたってことか?」

「いやー、そうじゃないみたいだぜ」

 少し遠くのナックルが、どこかを指差している。

 私達も近くに寄り、その方向を見る。

 人が歩いていた。

 だけどその人の背には、大きくて真っ白な羽根が生えていた。


      ***


「クリル村に羽根が生えた人、いた?」

「いないいない!」

 ソラリスが顔の前で手をぶるんぶるん振る。

 森の中に隠れながらその後も何人か村人を目にしたが、全員その背には羽根があった。

「ここがクリル村なら、とりあえず、私の家に行ってみますか?」

 私達は誰にも気付かれないように気をつけながら、村の外れにあるはずのソラリスの家の方に向かった。

「あった……」

 まったく同じ場所に、同じ家が建っていた。

「まず、私が入るから」

 ナディアさんが腰元からナイフを抜き、生け垣を飛び越える。

 扉を少しだけ開けて猫のように中に入っていった。

 少し経って顔を出したナディアさんは、私達を中に呼び込む。

「わ……」

 家の中に入ってすぐに、ソラリスがあたりを見回す。

「似て……るね」

 私から見ても、細部は異なるが家具などの配置や生活感は限りなく近い気がする。違いがあるとすれば、ベッドが二台から一台になっているくらいか。

「どうなってるんだよ! なんで天界と旧大陸が同じなんだ!?」

「わからないことは考えても仕方がないでしょ。それより、ここからどうするか」

 ベッドに腰掛けて頭を抱えるニックさんを、ナディアさんが諫める。

 ……コトン

 ほんの少しだけ、物音がした。

 それまで話していた二人は、即座に行動を起こした。

 ニックさんは拳銃を抜いて扉がある壁に張り付き、ナディアさんは、私達に物陰に隠れるよう合図を出してから、自分も扉にほど近い場所に身を潜める。

 ニックさんが、私達に目配せをしてから、そっと扉を開けた。


「ソラリス……?」

 ソラリスによく似た女性が、目を丸くしながら、そこに佇んでいた。

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