第71話 天界へ①
「本当に行くのか?」
ニックさんが私達の方を、怪訝そうに見る。
「はい……」
私とソラリスも、お互いを見合わせる。
「足手まといになるだけかもしれないですけど……行かせてください」
深く頭を下げたソラリスの声には、確かな芯があった。
「……戦いに行くわけじゃない。それは気にしなくてもいいだろう」
周りが反応しあぐねていた中で、アルハンブラさんがそう言った。
「君も行くのか?」
ニックさんが再び私の方を向いた。
「はい」
私は行くべきだ。そこに何の疑いもなかった。リリスは天界の力を持った勇者と、魔王の娘なのだから。
***
身支度を整えるナディアの元に、ソラリスが歩み寄った。
「ついていくことにしてしまってごめんなさい。これからいっぱいご迷惑をおかけしてしまうかも」
「別にいいけど。でも、あなたこそいいの? 何が起きるかわからないのよ」
「でもそれは、ナディアさんも同じですよね?」
ソラリスがナディアの顔を覗き込む。
「一人で全部抱えこんじゃダメですよ? 私でよかったら、話聞きますから」
その顔を少し驚いたように見つめていたナディアは、やがて微笑みながら指でソラリスの眉間をツンと突いた。
「生意気」
「やっと笑ってくれた」
そう言ってソラリスも、フフと笑った。
***
ああは言ったものの、怖いものは怖い。ソラリスは怖くないのだろうか? ソラリスと話したかったが、見当たらなかった。
私がいくつかのテントの中をキョロキョロと見回していると、私の後ろから声がした。
「落ち着かないのか?」
アルハンブラさんだ。
「天界ってどんなところなんですか?」
「さっきも言ったが、天界は戦いに行くところじゃない。神々が住まう地だ。あそこに争いはない」
「それはわかりました。そもそも私達が行っていい場所なんですか」
「さぁそれは……交渉次第だろうな。お前達自身の腕にかかっている」
「そんな……」
私は耳を疑った。
「運命をこじ開けるんだ。多少の無理はいる。君の……あ、いやリリスの祖父達だってあらゆる手を使って絶望的な戦況を打破しようとした」
「私達も同じようにできるでしょうか……?」
アルハンブラさんは私の両肩に手を置いた。
「ジャック亡き今、いくらダミアンが魔王にダメージを与えたとはいえ、確かに状況は相当不利だ。だが、今状況を変えうる存在は君だと思う、アズサ。ガルーアで生まれ、天界の力を得た勇者と魔王の血を引く身体に、冥界の力を使い、ポリアスの魂を宿しているんだ。君が思っている以上のパワーが、今君達には秘められている」
え……?
私は自分の身体を見下ろした。でもそんなこと急に言われても、にわかには信じられない。
***
野営地の焚き火の前で、私とソラリス、ナディアさんとニックさんが並び立った。目の前には、アルハンブラさんがいる。
「では、天界への扉を開くぞ」
アルハンブラさんは剣を抜いた。
「ちょっと待ってください!」
皆が一斉に振り返る。そこにいたのは……ダミアンだった。
「ぼぐもいぎます!!」
涙とともに、彼が言う。