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第67話 真実②

「ねぇ! ちょっと、大丈夫!?」

 目の前の牢獄の中で、リリスが頭を抱えて悶えている。落ち着くまで待って、声をかけた。

「……私の身体を使って、ずっとあの人のこと見てたよね?」

「……元々は私の身体でしょ」

 そうだった……

「あの人のことはちゃんと見なきゃいけない(・・・・・・・・)。そう思ったの」

 三角座りで小さく縮こまるリリスが、そう呟いた。

「なんでそう思ったの?」

「わかんない……」

「綺麗な人だったね」

「うん……」


      ***


「前回の魔界との決戦時、最後はジャック一人で魔界に残った。私達は"扉"の前で彼を待ったが、戻って来た彼の手には赤子が抱かれていた……」

 一同の間に、動揺がさざ波のように拡がる。

「おい、ちょっと待て。俺もその場にいたが、出てきたのはあいつ一人だっただろう?」

 冥王の言葉に眉を上げるブルース。

「いや、そうじゃないんだ(・・・・・・・・)。メリルが魔法をかけ、私達とジャック以外の記憶を改ざんした」

「何!? なぜだ!」

「剣を突き立て、"扉"を封印したジャックは我々に告げたのだ、その子の名はリリス。魔王と同じ名前だと」

「何だと……」

 ブルースは、なおも信じられないといった表情だ。他の面々はただただ絶句し、口を開くことすらできない。

 冥王はさらに言葉を続けた。

「リリスはジャックの孫ではない、娘だ。リリスは勇者と魔王の血を引いて生まれてきた」


      ***


「なんでだろう、他人と思えなかったんだよね」

 うん、私もそんな気がした。目の前のリリスと、初めて見たあの人は、どこか似ている。

「私ってね、昔の記憶が曖昧なの」

 彼女は唐突にそう言った。

「裏の丘に広くて綺麗なお花畑があるお屋敷にずっと住んでいたのは確かなのだけど、細かいことを思い出そうとするともやがかかったようになる」

「そうなんだ……」

「やっと自由になれると思ったら、また閉じ込められて……何なんだろうね、この人生」


      ***


「この事実は秘匿された。リリスも普通の人間とは成長するペースが違う。ジャックも魔法を覚えてリリスの出自を偽り、後に誕生したジャックのもう一人の子のベルクは、時にリリスの弟となり、兄となり、父となった」

「そんなこと……なんで……」

 ソラリスがあまりの衝撃に手で口をおさえる。

「そりゃお前、敵の大将との子どもなんて勇者にとっちゃ最悪の醜聞だ。隠して当然だろう」

 ナックルが吐き捨てた。

「……当時、魔界との戦争は本当に凄惨を極めた。大勢の人間が死んだ。その中には仲間も沢山いた。魔王の子などと知れたら全ての憎しみがリリスに向いてしまう。護る目的もあったんだろう」

「ケッ、どーだか」

 ブルースがかつての戦友をフォローするが、ナックルは調子を変えない。

「でも、そんなやつらの親玉と一度はそうなったってことだよな……」

 ニックの言葉に、場の空気はさらに重苦しいものになった。


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