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第66話 真実①

「あぁ、あぁ……ああ」

 魔王の脇腹、死神のナイフで刺されたところがどんどんとドス黒く変色していく。

 魔王はすぐにダミアンを弾き飛ばし、ナイフを抜いたが綺麗な白い肌が戻ることはなかった。

「うぅーー、あ゛あ!!」

 魔王が力を解放する。周囲が業火に焼かれていく。

「ダミアン!」

 冥王が息子を庇う。メリルの亡骸は呑み込まれた。

 火が燃え移ったマントは、冥王の一睨みで即座に鎮火した。

「よくやった息子よ」

 冥王がダミアンの頭を撫でる。

「お父さん大丈夫?」

「ああ、冥界の深淵の冷気はこんなものには負けない。だが、ああなってはしばらく手がつけられん。ここから離れるぞ」

 冥王が目をやった先には、全身が醜く歪み、半狂乱になりながら辺りに火炎をまき散らす魔王の姿があった。

「あれ? お母さんは?」

 ダミアンがキョロキョロと周りを見る。冥王は沈痛な表情で目をそらし、その小さな身体をマントで包んで、そっとダミアンの視線を遮った。

「あとで話そう……」

 冥王は手に持った大鎌で(くう)を裂いた。


「アルハンブラさん!? ダミアン!?」

 繋がった向こうの空間で、ソラリスが驚く。


      ***


 "扉"の外、数キロ離れた位置に急遽設けられた野営地で生き残った面々が顔を突き合わせた。

 焚き火を囲んで座り込んだ戦士達は皆、疲労と失意でグッタリしている。リリスはまだ目覚めていない。

「お、おい……本当に魔界はしばらく攻めて来ないんだろうな……」

 そんな声が聞こえてきた。

「ロマーナちゃんがさっきあのデカブツで蓋してくれたからね。アマゾネスの面々はそのまま今も見張ってくれてるわけだし」

 戦車に乗ったままのサムが、声のした方に目をやる。

「ダミアンが魔王に与えたダメージは相当なものだ。しばらくは回復に時間がかかるだろうな」

 人間達より後ろに一人立つ、冥王が言った。

「死神の鎌でつけた傷なんだろ。致命傷じゃないのか」

 ブルースが尋ねる。

「ダミアンの死神の力はまだ完全ではない。魔王ならねじ伏せられるだろう」

「じゃあ怒り狂った魔王がまた攻めてくるのも時間の問題ってことか。体勢を立て直さないといけないな……」

「おいおい勘弁してくれよ、何人死んだと思ってるんだ!!」

 ニックが立ち上がった。

「俺の目の前でも死んだ! そもそも無謀な作戦だったんじゃないのか!? 準備なんか何もできてやしなかった! 勇者様も死んだんだろ? ブルースさん、あんただって死ぬところだった!」

 ブルースは、しばらく何も言い返さなかった。目を閉じ、その言葉を噛みしめるかのように何度か頷く。

「……確かに、ちゃんとした準備はできていなかったかもしれない。だが、この戦いがなかったらこの世界はたちまち業火の渦に呑まれていただろう。かつてのように……」

 何か言いたそうなニック達を遮って、ブルースは言葉を続けた。

「戦になれば、人は死ぬ。それをお前らに教えておいてやれなかった。それこそが一番の準備不足かもしれないな」


「やめてください! そうやって言うの!」

 皆が驚いて声の主、ソラリスを見た。

 泣きじゃくるダミアンに寄り添っていたソラリスは少し動揺したが、涙とともに言葉を絞り出した。

「何があったって、親しい人が亡くなったら平気でいられるわけないじゃないですか! 皆の気持ちをもっと考えてください!!」

 皆が黙り込んだ。ダミアンの泣き声だけが響く。


「冥王……聴こえちまったんだが、ありゃ一体何なんです。メリル様が魔王と話してる時に、相手を『リリス』と呼んだのは……」

「!?」

 沈黙を破ったナックルのその言葉に、全員が顔を上げた。

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